リレーコラムについて

好きな、からだ。

石井克哉

はじめて年鑑に載るということで、
男はダイエットを決意した。

というのも、どうやら男は遺伝的に
丸々と太る体質だったからだ。

高校生や大学生のころは、ガリガリにやせていたので
いくら父親やいとこのおじさんたちが丸々としていようが、
何も感じていなかった。

けれど、社会人になって遺伝子の恐ろしさを実感。
あれよあれよという間に、男はプチ丸君になってしまったのだ。
「あーこのまま私は丸々となっていくのだろう」なんて嘆いているとき、
届いたのが新人賞受賞の連絡。そして年鑑への写真掲載の決定。

この機会しかない。男は決意した。今やせて年鑑にやせていた自分を残し、
将来子供が大きくなったとき、たとえ丸々ぷよぷよだったとしても
「昔はやせてたんだぞー」なんて言えるようになろうと決意した。

男は写真撮影までの約2ヶ月間で5kg以上やせて、大学時代の体型に
戻ることを目標にした。まずはインターネットを駆使して
自分にとって一番効果的なダイエット方法を調査。そして、調査を
進めるうちに一つのダイエット方法にぶつかった。
「炭水化物抜きダイエット」。
なぜ男に一番あっていたかというと…彼は炭水化物が大好物だったから。
つまり炭水化物が好きな人ほど、効果的だということが決めてだった。

そして男は早速、計画どおり次の日から1週間、炭水化物を一切取らず
その代わりに肉と野菜を豊富にとる生活を続けた。しかし、男の予想に反して
1週間で減った体重はたった1kg。水をがぶ飲みしたら戻る重さだった。
そこで彼は食事制限にくわえて、運動も開始。週に1回市民プールで
2時間泳ぎはじめた。
するとどうだろう。これが効果抜群。炭水化物抜きダイエットとの相乗効果か
みるみる体重は落ち、1ヶ月半で目標のマイナス5kgを突破。写真撮影当日
には、男の体重は目標の体重より1.5kgも減っていた。

彼はダイエットに成功し、意気揚々と写真撮影へ向かった。
そして、無事撮影終了。男の戦いは終わった。彼はその日の夜
焼肉屋で祝杯をあげ、帰宅途中にケーキを食べ、おまけに普段買わない
特大サイズのアイスクリームを買って、家についた。

そんな時、男は携帯電話に伝言が残っていることに気がついた。
「ピー。おつかれさまです。石井さん。○○です。今日は年鑑の写真撮影
おつかれさまでした。でも本当の晴れ舞台は3ヵ月後の授賞式ですよね。
楽しみにしていますよ。では。プー、プー、プー」。

8月の熱気で少し溶け始めた特大アイスを抱えながら、
男の戦いはまたはじまった。

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