五十嵐先生の話。
小藥元
五十嵐先生は、高校の担任でフランス語の先生。
あだ名は、ムッシュ。
白髪交じりのヒゲモジャのダンディーな親父だった。
高校3年間で遅刻・欠課を30回すると留年という規則の学校だったんだけど、
高校1年でもう僕は27回していた。
年間の成績が平均60点以下だと留年という規則だというのに、
僕の高校1年の1学期の成績は57点、2学期は53点だった。
親父がリストラされたり嫌なことも多かったけど、何より自分に夢も好きなことも何も見つからなくて、ただただ、しかめっ面しながら過ごしていた。入っていたボート部も「腰を痛めた」とか柔な嘘で辞めた。
時間だけがあった。どう過ごしていいか全くわかんなかった。
ある日ムッシュは、出来の悪いどうしようもない僕を呼び出してこういった。
「お前、高校辞めて、ラーメン屋でもやったほうがいいんじゃない?
手に職つけなきゃ駄目だ、お前なんか。早く辞めろ。」
一言も言い返せなかったあの教員室を8年経った今でも覚えている。
ムッシュのその言葉で僕はちゃんと学校に通うようになった。
さっき仕事帰りに、ひとりでラーメン食ってたら、ムッシュのことを思い出した。
もし僕が、ひげもじゃの親父を広告で使いたいときは、ムッシュに電話するよ。
「ボンジュー ムッシュ お元気ですか。小薬です。」
そんな話。
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