広告の道
本日、カンヌ広告祭の報告会が弊社で行われる。
社内にむけての講義で、
今年のフィルム部門の解説をすることになった。
事前の準備で、たくさんのフィルムを見直してみたが、
やはりカンヌの金賞作品たちの完成度、存在感には凄いものがある。
映画、演劇、音楽。
他のエンターテイメントになんら劣ることのない、
堂々としたコンテンツとしての力を感じる。
今年、何人かの友人が金賞をもらった。
彼らは、二千人の観客の前でトロフィーを受け取り
世界の広告メディアに、満面の笑みが紹介されることとなった。
タイのCD、Jureeporn は、
スムーズEというショートフィルムCMで受賞者になった。
彼女は他にも数え切れないほどの広告賞を獲得しているが、
金賞の知らせが入ったときは、授賞式のドレスの用意でさすがに慌てていた。
Jureepornは、
すべての仕事に向かうとき、
「これが最初で最後のチャンスだと思って、勇気を振り絞る。」と言う。
するとアイデアが降りて来るのだそうだ。
「一期一会」の心である。
演出のThanonchaiは、今年二本の金賞を獲得したタイのスーパースターだ。
ガンレポートでは、最近、世界ナンバーワン・ディレクターにランクされた。
彼は毎朝、自分自身の存在を自分で殺すと言うのである。
「ナンバーワンであろうが、人から期待されようが、無の自分になる。
そして、新しい一日を生き、仕事に向かう。」
「色即是空」ではないか。
Big Adで、金賞を獲得したAnt Keoghは、
オーストラリアの自由人だ。
エージェンシーで働く一方で、ミュージシャンであり、画家でもある。
かつて一緒にショートフィルムを作ったこともある。
Big Adは、「おちょくり」の心と、あくなき「ダサさ」の追求を楽しんだ結果だという。
予算を度外視した提案。壮大な馬鹿らしさの探求。
常識にまったく囚われない毎日を楽しんでいるうちに、気が付いたら出来ていた。
そんな感じである。
彼には、ある種の「解脱」を見た。
三人の話を聞いていると、
広告もまた、道であると思えてくる。
高みを求めて、歩んでいく。
その先に、驚くようなことが待っている気がしてくる。
この道は、まだまだ深そうである。
さあ、広告を楽しもう。
次回は、坪井卓くんにコラムをお願いしたいと思います。
弊社の若き逸材と言われております。ういういしい視点をお楽しみに。