リレーコラムについて

リレーのリレー<第2区>

タカハシマコト

昨日のコラムを書いてくれた田中モトくんは、
ひたり切った自分の世界を飛び出してオーストラリアロケに向かいました。
僕も先ほど沖縄から帰ってきたところです。
こちらは完全プライベートですが。
搭乗直前、運良く空いていたスーパーシートにアップグレード。
ゆったり快適な空の旅でした。
ちょっと残念なのは、窓口で予約したので、
憧れのあのひとことが聞けなかったこと。

「スーパーシートプレミアムのお客様ですね」

これ、ユーザーとしても書く側としてもほんとうに好きなコピーです。
しびれます。
羽田でこの看板を見るたびに、ついつい会話してしまう。
「いえ、今回は違うんです。でも、次はできれば・・・」
「ええ、今日はちょっと気張ってみました!」と(ポスターに)言える時は
すこしいい気分。
このコピー、国内線でいちばん広いこと(what)を
どう伝えるか(how)みたいな視点をこえて、
なんて言われたら受け手がいちばん嬉しいか、
という「読後感」から設計されているように思います。勝手ながら。
whatを言い当てて出来た気になってしまう日々の仕事を振り返ると、
反省しきりです。

人間でもいますね、そういう人。
なに言うわけじゃないのに、会った後ふしぎと後味のいい人。
リレーのリレー、2番手をお願いしたのはそんな人。
営業からコピーライターになって約1年、
早くもキャラを確立しつつある僕の元トレーニー。
きっと今、仕事が楽しくてしょうがない(はずの)
「笑顔の人たらし」原智史(ハラサトシ)くんです。

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【世界で最初の他人】

少人数の打合せが好きだ。
できれば、二人。
AD&C。

いま、僕は、こんな大それた場で、
愚直にも、広告づくりにまつわる話をしようと思っている。

大人数でなければ、大チームでなければ、できない仕事がある。
当然、ある。
多くの優秀な人がそれぞれの体験・知見を総動員し、
それぞれの専門性を十全に発揮し、巨大なキャンペーンを構築していく。
そして、それは、(うまくいけば)人口に膾炙する。
ダイナミクス。そして、カタルシス。

にもかかわらず、やはり、昔ながらのADとCだけの
“家内制手工業的”打合せが好きなのは、ノスタルジーだけじゃないと思う。

たった2人の人間がたがいの人格まで含めて干渉しあう、ピュアなケミストリー。
凡庸に例えるなら、恋愛にも似た、あの気恥ずかしい感じにどうしようもなく
惹かれてしまうのである。

寝ずに考えたコピーを、企画を、かかえて、打合せ向かうあの昂揚した感じ。
渾身のコピーを提示し、「うーん、ゼンゼン感じない」とか
「意味わかんなくない?」とか、
いわれ、身を引き裂かれるようなあの感じ。
もしくは、あっと驚くすべてを解決する魔法のアイディアが
目の前にすっと提示されるあの快感。
2人だけで、世界を開く鍵を独占したようなあの一体感。
そういったことのすべてにまつわるあのドキドキ感がたまらなく好きなのだ。

そんな時のADは、いうなれば、世界で最初の他人だ。
たった一人の頭から生まれてきたことを、世界で最初にぶつける相手。
ひとつのアイディアが、一本のコピーが、生きるのか?死ぬのか?
生んだ人間は庇護者にはなれない。
逆もまたしかり。
私たちもまた、彼らの生まれたばかりのアイディアにとって、
世界で最初の他人なのだ。

そこに可能性を見るか?不可能性をみるか?
試されているのは、むしろ、「他人」としてなのかもしれない。

しかし、と思う。
世界で最初の他人は、言い換えれば、世界で最初の友人でもある。
正確にいえば、友人になる可能性をもった他人である。

「よい友人であるためには、まず、よい他人でなくてはならない」
というのは、古い文人の言葉でもなんでもなくて、
いま僕が考えた言葉なのだが、
願わくは、よい他人でありたいと思う。よい友人になれるのなら、なおいい。

そんなことを思いながら、僕は、今日も会議室へ向かう。
世界で最初の他人が待っている、あの僕らの会議室へ。

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