リレーコラムについて

たじま・ひもゆき

田島洋之

●丸原くん、富田くん、そして私へとバトンタッチしてきた第40回宣伝会議賞、金・銀・銅リレーコラム。最後に、このサイトを訪れるのは、これからコピーライターをめざす方が多い、と伺いましたので、宣伝会議賞をとった時の話をします。すごく長いです。何の足しにもならないかもしれないけれど。

●23歳。横浜にいました。夏には八景島シーパラダイスの花火をベランダでビールを飲みながら鑑賞できる、海の見える丘の高層マンションの13階。というと優雅ですが、住んでいた、というか居候。当時の彼女の親が海洋学者でマダカスカル島へ1年出張。それをいいことに転がりこんで、ヒモ(ペット?)として、ウダウダと生活していました。

●彼女が朝出かけるところをベランダから見送る。布団を干し、掃除機をかけて「ど〜なってるの?」を見ながら「世の中にはしょうがない人がいるもんだなあ」と笑う、働かない23歳。午後からは、ファイナルファンタジーに没頭し、そして夕方に彼女からメールで送られてくる「今日の買い物」を見て、近くのスーパーへ。一生この生活が続くといいなあ、ランララン♪と散歩がてら。まあ、ホントにアホですね。

●当時は髪の毛伸ばし放題で、連日の冒険(ゲームの中)のクマにより、同じ棟の奥様方からは、突如現れたあやしい青年、として冷たい視線を浴びていました。いくらか納めようと、バイトも何度かトライしたのですが、運送の仕事とか、引越しの仕事とか、なるべく無理な笑顔を強要されないバイトばかりを選んでは、出勤日に「気がのらねえなあ」と突然辞めてしまって、結局、どれも長続きしませんでした。社会性ゼロです。

● そんなこんなで、フラれました。彼女の会社の仕事のデキるイケ面に寝取られました。傷心の中、職につくことをせまられた私は「営業はできないし、本が好きだから」というカンタンな理由でこの仕事を選びました。企業の課題解決をする、コピーライターの仕事の本分をまったくわかっておりません。そんなわけですから、どこへいっても門前払いです。

●ようやく拾って頂いたのが、日本アート印刷さんです。広告の雑誌にのるような、派手な仕事はなく、しこたまリーフレットなどをつくる3年間だったのですが、40文字のキャプションに気合いを込めるのが、性に合いました(この会社にお世話になったおかげで、いまでも小さなデータのコピーを書くのが大好きです)。

●しかし、あんまりこの仕事に向いてねえのかなあ、転職するにも実績もないし、田舎に帰ろうかなあ、と悶々と悩んでもいました。「よし!今年ダメだったら、もう向いてないってことだ。ハシにも棒にも引っかからなかったらやめるしかない!コピーの神様に運を委ねよう!(いま思うと非常に視野のせまい、あぶない衝動!)」と腹をくくって、一念発起して宣伝会議賞にとりくんでみたわけです。

●文才はないので「日本一頑張ったら、日本一になれるはずだ」理論のもと、どのぐらいやったら日本一かな?と考えました。数じゃなくって、一日100本×60日で6000本。怠けず、これを、徹底する。高校の時も3年間、毎日3キロの重さのバットを500回素振りをし、補欠からクリーンナップまではい上がりました。基本的に、頭が筋肉の超体育会系なんです。で、めでたく金賞を頂きました。ベットの上でジャンプして、天井に頭を打ちました。「イテ〜」と言いながら「ヘヘヘ」と笑っていたと思います。これまた、あぶない、キモいです。

● そして27歳。人と接するバイトを避け、ヒモだった自分は「ダイレクトにお客さんと話がしたい」と180度逆の生意気を抜かし、現在のパラドックス・クリエイティブに至ります。実力主義の厳しい会社なのですが、基本的に人生がロースペックなので、なんでもホイホイと食べているうちに、運よくTCCの新人賞も頂けました。そして現在31歳。先月からパパとして、子育てにも奮闘しています。

● なんだかとりとめのない感じになってきちゃいましたが、結局何が言いたいかというと、「父ちゃん、母ちゃん、オレはヒモから人間的に成長したよ」ということではなく(それもちょっとアピールしたいけど)、過去の自分のように、社会と折り合いがつかなかったり、いまの職場でモンモンとしている皆さんへ、「人生、気合いで、なんくるないさあ」とお伝えしたいのです。

みんな頑張ろう。私も頑張ります。

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コラム期間中、メールを頂いた皆さん。
この場を借りて、ありがとうございます。
とても励ましになりました。ちなみに頂いた寝言で一番プッときたのは
「ちっ…なんだよ…梅宮辰夫しかいねぇのかよ…」です。
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来週は、犬が苦手な私の後ろで、愛犬の話ばかりする、
同じくパラドックス・クリエイティブの岩崎亜矢です。
どうぞ、ご期待ください。

www.prdx.co.jp tajima@prdx.co.jp

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