裸マラソン
篠原誠
ある雑居ビルのエレベーターに一人乗り込む。
扉が閉まって、数秒。エレベーターが動いていないことに気づく
と同時に、自分が行き先階を押していないことに気づく。
都会の喧噪を離れ、一人、異空間にいるような錯覚に陥る。
すぐに電気が消えて、暗がりになる。
これ、しばし、この空間を楽しんでみようではないかと、
いたずら心も働いて、行き先階を押すことなく、
自分の夢や展望について冷静に考えてみよう、なんて、思った瞬間。
ピンポン!
扉が開いて、待ち受けていた人がワッと驚く。
そりゃそうだ、止まっている暗いエレベーターを開けてみると、
むっさい男が一人乗っているのだから。恥ずかしさのあまり、
「おっかしいなぁ」
と独り言を言って、エレベーターを降りてみました。
これは、もう、かつての「よっしゃこーい」事件レベルで
はずかしかったです。
ちなみに「よっしゃこーい」事件とは、
数年前に、会社の入っている聖路加タワーのエレベーターで、
ある階で、乗っていた人全部が降りたことがありまして、
私エレベーターの閉のボタンを押しまして、
エレベーター内、自分一人になったと思いまして、
何故か、
「よっしゃこーーーーいい!!!!!」
と両腕を高々と掲げてあらん限りの大声で、叫んだのでした。
ところが、次の瞬間、背後に何か気配を感じまして
真後ろを振り向くと、そこには、あるCDがいらっしゃいまして、
明らかに、それは、恐怖というものを押し殺した表情で、
「別にいいよ。」
とおっしゃったわけです。次の瞬間、チン!むなしく、
エレベーターが止まり、扉がひらきました。
なのに、何故か、僕は、
一人になったから、こんなことやってしまったと思われたく
なかったのか、むしろ、この「よっしゃこーい」は、
僕の中で、自然なこと、みたいに見せたくてなのか、
エレベーターをおりながら、
「よっしゃこい、よっしゃこい、よっしゃこい」と
連呼してしまいました。もう、ヤッターマンの
ビックリドッキリメカさながらに。
とにかく、それ以来、エレベーターは公共の乗り物!!!と
強く肝に銘じていたのにもかかわらず、
また、やってしまったしだい。
学習能力がないのか、教育の問題なのか…。
そこで、今日は、強引に教育のお話をしたい。
僕自身は、教育に関して、大変恵まれておりまして、
なんといっても、ド田舎で育ったおかげで、
学校は遊ぶ場所で、勉強自体も遊びの延長だったわけです。
小学校の同級生も僕いれて6人でしたし、
6年間で算数と漢字のテストはそこそこありましたが、
理科は一回、社会も一回しか、テストはありませんでした。
雪が降ったら、一日雪合戦、
理科の時間は、毛虫の内臓で、釣り糸づくり、
複式学級で、34年生、56年生は一緒に授業。
朝はみんなで、裸マラソンなんていって、
男子も女子も、上半身裸、下は短パンで、10分程度走るわけです。
高学年の女子はおっぱいゆらしながら。
遊び道具は、自然だけ。魚とったり、
とっちゃいけない野鳥つかまえたり、もうはちゃめちゃなわけです。
僕にとっては、あの教育環境はよかったけど、
あれが、一番いいとも実は思ってなかったりして。
でも、今の教育については、なんだか本当に????
ちょっと罰をあたえたぐらいで、体罰だ!!って叫ぶ親御さんとか、
それが当たり前になっている状態とか、でも、そういいたくなるくらい
起こる先生の不祥事とか。
一時期は、先生の給料をもっと上げて、競争率も上げて、
そして、あこがれの職業にしていけば、いいのではないかとも
思ったこともありましたが、そう単純でもなさそう。
いい先生。
という定義が難しいんですね。学歴というか、知能だけなら
計れるかもしれないけど、教育という不確定で、でも
すごい大事な部分の資質みたいなものが必要な気がして、
でも、それをどうはかれば、いいのかがわからない。
それさえ、ある程度正確に計れれば、先生の給料を
今の3倍ぐらいにしてでも、尊敬される立場に変えていくのが
てっとりばやい気もするけど、実に難しい。
でも、非常に非常に大切なことだと思うのです。
だって、教育は、未来や可能性をつくりだす崇高な仕事だから。
今、すごく当たり前のことを自信満々に書いております。
まあ、教育ついて、書き出すと論文とかになるくらい長くなるので、
これくらいにしときますが、実は、というか、僕には、
会社に入ったときからの夢がありまして、
それは、今も、まだ僕の大切な夢なのですが、
僕は、将来奨学金を作りたいと思っています。
別にそんなのもう、あるじゃん。と言われそうです。
はい、あります。あるけど、つくりたいのです。
これだけ、恵まれた日本でも、やはり、金銭的な理由だけで、
進学をあきらめてしまったり、夢をあきらめている子どもがたくさんいる。
僕が奨学金をつくったところで、その数はゼロにはならないけど、
少しでも、そんな子どもを応援したい、それが、僕の夢なんです。
だから、もし、このコラムを読んでいるお金持ちの方、
遺産を相続する人がいない方、時々お金を竹藪に捨てる方、
街にまく方、ご連絡ください。
さてさて、来週のリレーコラムは、
僕の後の席に座っている今年TCCの最高新人賞をとった
日下ボーイです。
東大医学部を中退し、多摩美に入学。
1年もたたずして、多摩美も中退し、単身アメリカで
デザインを勉強しながら、何故か電通に入社という
異色プランナー。幼少時代は、親の仕事でアフガニスタンや
レバノンで過ごしたちょっと、かわった男。
日本語の方が、下手なのに、よくTCCの最高賞?と
周りを驚かせた男にバトンを渡します。
リレーコラムなのに、
日本語が少し変になっていまう確立高いですが、
そこは、ご愛敬。ちなみに純日本人です。
では日下よろしく。
今年は、ニューヨークで個展開かないのかな?
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