ちょっと煙たい話
僕がはじめてタバコを吸ったのは小6だった。
マイルドセブン220円。
正確にいうと、ふかしただけだったけれど
ワルぶってみせて、みんなの注目を
集めたかったんだと思う。マセていた。
母には、その日のうちにバレた。
特大パンチを覚悟したけれど
母は僕の前で、ただただ泣いた。
その日、タバコは子供が吸ってはいけない
ものだと、僕ははじめてちゃんと理解した。
O型の、わりとザックリした母が
僕の前で泣いたのは、この日と
僕が拾ってきた猫が家の真ん前で
ひかれて死んだときだけだった。
じいちゃんが死んでも母はいつも通りだった。
20歳の誕生日を律儀に待って
僕はまた、タバコを吸いはじめた。
マルボロ赤280円。
豊田市のはずれにある薄暗いプールバーで
マルボロの赤とコロナビールの黄が
妙にかっこよく思えた。青かった。
体育会のアメリカンフットボール部に
所属しながら、1日1箱半、吸っていた。
実業団に入っても吸っていた。
30歳になったころ、マルボロライトは330円。
3回胃カメラを飲み、3つの病気が見つかった。
逆流性食道炎、慢性胃炎、十二指腸潰瘍。
医者は「仕事のストレス」だと言ったが
タバコをやめたら3日で痛みがとれた。
それ以来、タバコは吸っていない。
僕は、図らずも人生で2度タバコをやめました。
きっかけは、母の涙と、自分の病気です。
今まで「タバコは害悪です」的な言葉を
どれだけ目にしてきたのかわからないけれど
そのうちの、どの言葉も僕には効きませんでした。
広告業界に就いて、11年目。
今、仕事で禁煙を促すコピーを書いています。
でもどこか、現実味がありません。薄っぺらい。
言葉には、広告には
ホントはどれほどの力があるのでしょうか。
僕はこの仕事を生業にしようと決めてから、
実はまだ答えが出せないでいます。
hidenori.iwata@isbbdo.co.jp
昨日書いたコラムについて、たくさんの
メールをいただき、ありがとうございました。
お返事はできるだけ早く書きます。絶対。
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