15才で見つけた。
15才のときに、和田誠さんの『花とひみつ』(話は星新一さん)
という絵本を購入した。
まだ和田さんがイラストレーターとして有名になる前だったと思う。
後で和田さんの『銀座界隈ドキドキの日々』という著作を読んで、
この『花とひみつ』は和田さんがライトパブリシティの頃に、
初めて出された自費出版だと知った。
今でも引き出しの奥にある。始まりの予感の宝もの。
父親が広告代理店をやっている友だちがいて、
私がその友だちに出した年賀状を「センスがある」と
誉めてくれたと聞き、
以来、彼女に出す賀状は人三倍くらい凝って作った。
これも15才のときだった。
広告やアートとは無縁の家に育った私が
大人になって広告の世界に足をふみいれたのは
直接話したことはほとんどない、この友人の父親の
ひと言に後押しされた気がしている。
その後、センスをほめられたのは、いつだったろう。
さるCFプランナーと、仕事をしていた頃、
銀座のシチリア(なつかしのイタリアン)で、
テーブルのコップの氷をながめつつ
「氷をテーマに何か考えてごらん」と言われたので
「考えている間に溶けてしまう」と反射的に応えたら、
それは私がそれまでに話したことや出したコピーのなかで最高のものと
いたく喜ばれ、かえって驚いた。
その後、たいへんな有名人になったその人と
よく打ち合わせで歩いたその頃の銀座の風景が重なる。
今の住まいの近くにデザインスクールがあって、
イラスト科という文字を見ると未だ心がちらっと反応する。
ときどきこっそりと仕事の制作物のなかに
下手へたイラストを描いている私。
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