安全地帯で、コピーは書けない。
会社に入って一度だけ、
思いきり殴られたことがあります。
拳ではなく、言葉で。
あれは、入社一年目の頃。
マーケティング志望で入社したのに、
どういうわけかコピーライターになって。
全くコピーを書いたことのない僕は、いきなり仕事に入ることもできず。
トレーナー(師匠)からコピーの個人指導を受けることになりました。
毎週ひとつの課題が出され、コピーを100本書く。
それを週に一度2〜3時間かけ、ひとつひとつ見てもらうのです。
僕の場合は、切り口までは出るのだけど、それを、泣けたり、笑えたり、
ハッとさせたり、と活きた届く言葉にするのが、どうも苦手でした。
「言葉の解像度が粗い」とか、
「こそこそ話すのか、大声で叫ぶのか、声色まで考えろ」とか。
トレーナーは、色んな言葉で、そこを突破させようとしてくれました。
でも、頭では分かっていても、身体的に分からない。
ついつい「聞こえのいいこと」を言って満足してしまう。
そんなある日、課題を見せおわったときに、
怒りを押し殺しながらトレーナーが言ったのです。
「自分だけ、安全地帯にいるんじゃない。」
僕は最初、意味が分からずキョトン。
「他人事のフリしてコピーを書いている、お前の態度が気にくわねぇ。
いちばん最初に自分が、傷つくような、驚くような、
泣けるような、笑えるような、そういうコピーを考えろ。」
言葉でガツンと殴られた、
そんな感覚になったのはその時が初めてでした。
コピーライターは、ただかっこいいこと言う人じゃなくて。
世間の常識を、言葉で、非常識にしていく人。
その言葉を発する本人が、真っ先に傷つくくらいじゃないと、
そんなことできっこない。
あれから4年。
仕事のポリシーを堂々と語れるほどではないけれど、
「自分だけ安全地帯にいやしないか」
それだけは、心がけて仕事をしています。
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金髪をたなびかせ颯爽と
福岡へ旅立った原智史さんより
バトンをうけとりました。
細田高広です。よろしくお願いします。
いきなり↑のような真面目な話を書こうと思ったのは、
2つの理由が重なり、入社時のことが思い出されたことによります。
1つは、そのトレーナーだった斉藤賢司さんが
TCCの審査委員長賞を受賞したという知らせを聞いたこと。
もう1つは、職種の違う後輩の相談にのっていて、
「細田さんは、天職を掴んでるから」と言われ驚いたこと。
>ケンジさん
読んでくれているかわかりませんが、
おめでとうございます!
>後輩くん
そういう訳で、未だに向いてない仕事をしてる感覚です。
でも、不向きを、自分向きにすることが成長のはず、と
日々言い聞かせています。
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