『娘の言葉』
自分にこどもが出来るまで、こどもなんかキライだった。
大人の冗談が通じないし、間は悪いし、
大したトークができるわけでもないのにうるさい。
ところが自分に娘ができてみると
それは例外なくかわいいものだった。
目に入れても痛くないので
右目から入れて左目から出したりして遊んでいる。
5月18日に生まれた語呂合わせと
言葉を大切にする子になって欲しいと
「こと葉」(ことは)と名付けた。
2歳になった頃、
もうはかなくなった紙おむつを頭にかぶり
「帽子!帽子!」と
へらへらと笑いながら近寄ってくる娘を見て、
ああ、妻に似たんだなと思った。
2歳のシュールなボケに固まっていると、
いきなり頭のおむつをとり
「帽子ちゃうわっ!なんでや!」 と言って床に投げつけた。
誰が教えたでもなく(テレビも見ないのに)
それは完璧な「間」のノリツッコミであった。
2歳を過ぎ、
風になびくカーテンに抱きついて
「見て! 風さんつかまえた!」 などと言ってるうちは微笑ましかったが
どんどん言葉のするどさが増してきた。
机の上のパパの煙草に触ってはいけない。
と言うと
「触ってない。(手が)ちょっとあたってるだけ」
トイレにいる娘に、パパもしたいから早く替わってと言うと
「パンツ脱いで外で順番待っといて」
3歳になり、父としていろいろルールを教えていた。
「ベランダから身を乗り出してはいけない」
「車には気をつけて信号は守らないといけない」
「ママの言うことに決して逆らってはいけない」
「ママのおやつを食べたら最後と思え」など。
命にかかわることを
ひとつひとつ丁寧に話してやると
「なんで?どうして?」 と聞くので
「危ないからだよ。死んでしまうからだよ」と説明すると
ずいぶん間があって、じっとこちらを見つめて
「パパ、死んだことあるん?」
それはもはや
こどもの純粋な疑問ではなく
「(死んだこともないのに)何を分かったようなことを言っているのか」
という、詰問にも似た妻にそっくりな眼差しであった。
僕が消え入りそうな声で「…ないけど」 と言うと
「え?なに?」 声が小さくて聞こえませんけど的な圧力。
これからますます言葉を覚えていくと思うと恐ろしい。
こんなことなら
「タコ」という名前にしとけばよかった。
すかしっぺ夫婦の「かきなぐり漫画」。
妻と共作の四コマブログです。見るだけ時間の無駄!
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