リレーコラムについて

寅馬

塚田由佳

最近、児童合唱曲の『チコタン』(南安雄作曲/蓬莱泰三作詞)の歌詞が
惨すぎて衝撃的だという話が、一部で話題のようだ。
幼い頃から、児童合唱団に所属していた私は
もちろん『チコタン』を何百回と歌った。

『チコタン』を知らない人のために、
ざっくり楽章ごとに内容を追うと、

第一楽章:チコタンのことが好きでたまらないぼくが「なんでかな」と
     愛についての自問自答をくりかえす。
第二楽章:チコタンに「お嫁さんになってください。よい子になります。
     鼻クソほじりません」とぼくが愛の告白をする。
第三楽章:ぼくが魚屋の長男で、魚屋を継がなくてはいけないから
     魚嫌いのチコタンにふられたんだと、両親に八つ当たりするぼく。
第四楽章:チコタンが好きなエビ・カニ・タコだけ売る魚屋になる、と約束し、         
     チコタンからオッケーをもらい、舞い上がるぼく。
第五楽章:いきなりダンプにひかれてチコタン死亡。ぼくの絶望。

明るく楽しい旋律から始まり、最後にはどん底の絶叫とともに終わるという、
たしかに残酷な合唱曲だ。

でも、歌っていた当時の私は、無邪気に毎回、
ラストシーンでは『アホー!!』と絶叫していたように思う。
そう、この『チコタン』は歌詞の内容は確かに残酷だが、
子供心に理解できる内容だったし、メロディーもシンプルで
覚えやすかったので、そんなにトラウマにはならなかったと思う。

というのも、もっと衝撃的な合唱曲があったから。
それは、『オデコのこいつ』(三善晃作曲/蓬莱泰三作詞)というタイトルで、
こちらは、歌詞もメロディーもかなり難解でぶっとんでいた分、
かなりのトラウマになった。

今、そらで覚えている第一楽章の歌詞を書くと
(記憶違いの部分も若干あると思います。ご容赦ください。
 現代では表現として適正でない歌詞もありますが、
 原作に忠実に表記します)

へんてこ
へんてこ
へんなんだ
へんてこりんなんだ
ぼくのおでこのうちがわに
へんなやつが しゃがんでるんだ
へんてこ

くろ くろ
くろのまっくろニグロ
くろ まっくろニグロの子
やせっぽっちのニグロの子
目だけがギョローとでかいやつ
おまえは
おまえはいったい誰なんだ
いつから
いつからいつのまに
どうしてなんだろ どうして
ぼくのおでこのうちがわに
いつから どこから どうやって
もぐりこんだんだ ちび
ちび ちびっこ ニグロの子
骨と皮との ニグロの子

おへそだけ おへそだけ
プクーっとでかいやつ

だいたい ぜんたい失礼だぞ
無断でこっそりもぐりこみ
だまりこくって白い目むいて
ぼくはおでこが重いんだぞ
ぜんぜんおでこがおもいんだぞ
おいこら 返事しろ
聞こえないのか 返事しろ
ぶんなぐっちゃうぞ
返事しろったら 返事しろ

(おでこのこいつ)
『ビ・・ ア・・ フ・・ ラ・・』

こちらは、アフリカの戦争飢餓に苦しむビアフラの子供が、ある日、
オデコの中に住み着くという、なんとも奇怪な歌だった。
主人公は、自分の目の前で母さんが死んでも、おなかがすいて涙も出ない
という悪夢をみたあげく、最後には、“オデコのこいつ”が自分のオデコの中で死んでいるのを見つけ、自分が殺したんだと落ち込む。
いったいぜんたい、なんでこんな怖い歌を子供に歌わせるんでしょうか、
というような内容の合唱曲です。
しかもメロディーは、どこまでも不協和音なのに、とてつもなく美しいのです。

これは、トラウマになりましたね。
いまだに、これだけそらで歌詞が出てくるんですから。
もし、興味のある方は、どこかで聴いてみてください。
夢に出ると思います。フフフ。

さて、一週間、おつきあいいただいた方、
ありがとうございました。

来週は、私が入社した時からのコピーライターのお師匠さんである
渡辺悦男さんです。
悦男さんは、かのユーミンと同い年だそうです。
(同じ時代を生きて、同じものを見てきたんですねぇ)
悦男さんは、みんなのアイドルです。
(甘いお菓子があると、かわいらしく現れます)
悦男さんは、本当にステキな文字を書きます。
(その文字に憧れて、真似してコピーを書いたものです)
本当は、悦男さんの万年筆で書くコラムを読みたいところですが、
それは、まだ別の機会に。

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