リレーコラムについて

日本の心を動かす仕事。

広渡紀子

この度の東日本大震災で被災された皆様、そのご家族の皆様に、
心よりお見舞いを申し上げます。
震災後3ヶ月近くになりますが、原発事故もあり、まだ不安の日々は続きます。
コピーライターの皆さんは、あの日から、どのように毎日を過ごされたでしょうか。

 (震災後)
 何事もなかったやうに春の川      広渡詩乃

私は大学で広告演習の授業をするにあたり、
新学期の最初に、いつも学生にアンケートをとっています。
最近の広告で印象に残っているもの、とか、好きな広告とか。
人数が少ないので参考にはなりませんが、今年は震災直後ということもあり、
やはり、ACのCM(ぽぽぽーん、他)が印象に残っていたようです。

また、震災直後から1ヶ月の新聞広告を学生とともに調べてみました。
震災翌日から1週間は、広告はほとんどなく、
ガス、電話、保険などの企業からの緊急なお知らせやお願い、
お見舞い広告程度。しばらくして下5段に雑誌の見出し広告が入り、
だんだんと商品広告や通販広告も入るようになりました。
4月からは新年度ということもあり、カラー広告も増え、
いつもの新聞紙面に戻って落ち着いてきた印象でした。

これは東京の新聞をざっと見たものですし、きちんと検証したものではないので、
ほとんど印象にすぎません。
しかし、学生と広告の役割を考える大事な機会となりました。

その後、テレビCMを中心に、広告の内容は「頑張ろう」というメッセージや、
「団結」や「絆」をキーワードにした企業広告も多くありました。
現在は商品広告が復活し、日本中が暑い夏へ向かい、節電対策に追われているようです。

4月の末に電通総研から発表された「震災一ヶ月後の生活者意識」調査概要
「『日本新生』を支える『意識・ライフスタイル・社会システム』の変化予測」
によると、やはり短期的な意識・行動の変化が明らかなだけでなく、
中期的に見たライフスタイルの変化が予測されています。
さらには長期的な社会システムの変化まで示唆されていました。

震災は、被災地だけでなく、日本人の心を大きく揺さぶりました。
そして広告は、その日本全体の気分、心持ちを左右するものであることが、
この数ヶ月で改めてわかった気がします。
そして、その広告をつくるのが、コピーライターです。
私たちは、日本の心を動かす、大事な仕事に携わっています。
ひとつひとつの仕事の向うに、広告を見る人々の顔を思いつつ、
背筋を伸ばして歩んでいかなければ・・・・。
身の引き締まる思いがしています。

なんだか、おおげさになってしまってすみません。
来週は、敬愛する竹内好美さんに、コラムをバトンタッチします。

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