紛れもなくこれもコピーなんだな(5) 鱧と思考
■がんばれジョブズ■
今朝の日経の33面の「ゼミナール」欄では
神戸大学の三品先生が「新たな統合」というタイトルで、ちょっと面白い話を
展開しておられる。
これまでの大企業は、
原材料から販売に至るまでモノの流れを市場原理に頼らず
人の手によって制御する垂直統合を推進した。
一方で、
アップルは新たな統合の原理を創出しつつある。
基幹部品を作るのではなく購入で済ませ、組み立てさえ手掛けない。
生産は電子機器の受託製造サービス(EMS)に委託し、
自らは製品の「企画」に専心するのみである。
一見、垂直統合の放棄のように見えるが
実は、ジョブズは、「ユーザーエクスペリエンス(利用体験)」を統合した
というのが、三品先生の指摘である。
私たちが、現代の日常生活において必要とする、
文書・写真・音楽・ビデオ・住所録・予定表・メールなど
さまざまなファイルを自由に取り出して加工し管理することが
今や、いつどこに居ようとも可能となった。
アップルは、アイ・フォーン、アイ・パッドという端末を「企画」することで
世界を魅了するインターフェースでもって、自由にさまざまな情報を
持たずに操る環境を実現させた。
いまや、その世界観は、人々の生活をなによりも身近なところで
大きく確実に変えている。
新しい「統合」は、人々の“体験”を、すべてまとめてしまう。
アップルという企業が、そんな世界をつくりだした、という記事である。
■コピーライターがストーリーを語ると■
経営学の一般書籍で珍しく大ヒットとなった
『ストーリーとしての競争戦略』という本の功罪で、
最近、結構、ストーリー性のある提案を、と求められることが多々ある。
本来、コピーライターこそ、ストーリーをつくりあげるのは
かなり得意とするものだったりするのだけれど
危険なのは、ストーリーって、起承転結が一応カタチになってると
さも、「ストーリーができあがっちゃった」ように見えてしまうことだったりする。
そんな美味いストーリーなんて、ほんとにありえるかどうか
論理矛盾はないか、よくよくチェックしないといけないのに
耳に心地よいストーリーがあると、構想力があるなんて評価されちゃって
実は、全く「画に描いた餅」にすぎないものが、競合で勝っちゃったりして
実行してみると、さっぱり「ストーリー」どおり進まないなんて
シャレにならない「ストーリー」になる危険は結構小さくないと思う。
一昔前より、はるかにビジネスマンが勉強しているから
(勉強ブームとかで)
思考が結構みんな似てきたりして、話はよくあって
意図されてる真意なんか共有できることは多くなってきてるような気がするんだけど
怖れることなく軽々しい「ストーリー」を連発することは
死屍累々たる不発の物語を量産する可能性を
コピーライターは秘めているのではないか、と最近自戒している。
■最近の仕事■
他人の仕事論ばかり語っていても仕様がないので
最近の自分の仕事を少し振り返ってみると、
コピーを軸にしながら、これまでお付き合いしてきた方々とは
少し異なる畑の方々と、お話をする機会が増えている。
必ずしも、広告的な話ではないが
企業人であるところは変わらないし
そもそも電通にお声をかけていただいているので
何らかのコミュニケーションに関わる事案であることは
多かれ少なかれ変わらないので、何をしたらいいのやらと、当惑することはあまりない。
どんな課題に対しても、コピーというものの持つ力で
さまざまな「スッキリ!」を提供できれば
曲がりなりにも16年もコピーライターをやってきたキャリアは無駄ではなかったと
思えている。
■単なる反動か、パラダイムの変化か■
心から尊敬してやまない先輩コピーライターから
コピーに関する嗜好の変化(2日目のコラム)は、
本当に、自分のなかでのパラダイム変化なのか、
単なる反動でそうなっていて、また揺り戻しがあるのか
答えは微妙なところじゃないか、と指摘をいただいた。
まさに、そうで、
これは、はっきりいって、10年後くらいになってみないと
結局、どうだったのかはわからない問題かもしれない。
きっと、そうだな。
嗜好の変化といえば、
先日、鱧しゃぶを大阪港近くの「一平」という店に食しに行ったのだけど
生まれてはじめて「鱧というもの」を、オイシイと思えるようになった。
ちなみに、ここは、「焼きふぐ」も絶品で
東京から来られた時は、是非おススメです、この夏!
嗜好は変わる、思考も変わる。
今回のコラムも、あくまで、2011年の7月の自身の備忘録にすぎないカンジである。
次はいつ、書けるかわかりませんが、
また、7年後だと、48歳だ。
もう、相当、人生、晩年に近い方にいってるな。
元気でお会いできるといいですね。
あ、またコピーの話、忘れてた。
3日前に、仲畑会長が弊社東京本社に来られて対談をされていた。
そこからのコトバをいくつか。
「(モノを売ろうとするのに)本気の人が少なくなってる。オレの方が1コでも1枚でも
多く売ろうとしている。タクシーに乗ったら、運ちゃんの1人、2人から潰していこうと
努力してる」
「人間なんてものを体系化できるワケがない。成長もすれば退化もする。オンナだって、
1回ですぐ変わる(微妙に手を入れています)」
「これまでの自分の経験では
論理的なものは、逸脱してるものが多かった。
論理つくってるだけで、アクションしてない奴は
商売としてやってるだけで
(それが世の中の新しい動きであるなんてことはいえないだろう)」
至言である。
それでは、一週間、全くまとまりをみせない長いだけのコラムに
お付き合いいただきありがとうございました。
次回からは、
サン・アドの古居利康さんです。
古居さんとは、2008年の年鑑の一次審査員どうしが
その年の総会で、新しいシステムの感想を語り合う座談会で
ご一緒させていただきました。
TCCのいいところは、
ほんとうに多士済々が、さまざまな役割の中で
コピーという武器を手に手に日々戦いつつ
非常に知性と痴性の高いレベルで切磋琢磨できることだと思っています。
いや、あの時の、座談会&打ち上げパーティーたのしかったですね。
古居さん、そして、あのときのみなさん、また、お会いしたいです。
では、どうぞよろしくお願い致します。
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