なでしこのこと
碓井さん、バトンありがとうございます。
サン・アドの古居です。
みなさま、一週間よろしくお付き合いください。
昨日未明、いや、もう一昨日になってしまいますが、
「なでしこジャパン」の快挙。思うに、彼女らの折れないこころは、
逆境によって養われたのではないか。男子の場合は、つい最近まで
アジア予選突破すら困難で、幾多の辛酸を舐め、共に地獄を見てきた、
苦い記憶が残っている。だから決勝トーナメントに進んだていどでも
ほめられたりする。ところが女子の場合は、ワールドカップに
6回連続出場しているにもかかわらず、国民的体験になっていない。
ふぅん、女子サッカーねぇ・・と見くびられたりすることも
いまだにある。
いや、ごまかすのはやめよう。それは僕がひそかに思っていること。
女子サッカーがスポーツとしてつまらないのは、
男子と同じ面積のグラウンドを使っているからではないか。
なんだそのサハラ砂漠みたいに広々とした左サイドバックは。
密集するばかりで展開がない。ゴール前に届かないコーナーキックは
見ていて萎えるぞ。しかし、それは女子のせいではない。
広すぎるピッチのせいだ・・。年俸だってかわいそうなくらい
もらっていない選手もいて、職業として成り立っていない女子サッカー。
つまり、彼女らは、相手チームと戦う前に、僕のような世間一般とも
戦ってきたのではなかろうか。
もうだいぶ前のことですが、友人でデザイナーの西川くんに連れられ、
後楽園ホールに女子プロレスを見に行ったことがあります。
北斗晶がまだバリバリの現役だったころですから、遠い昔のことに
なるかな。身体がやわらかいせいか、あるいは一部選手を除いて
体重が軽いせいか、女子の繰り出す技は、男子のそれとは
どこかちがって軽業師的で、アクロバティックな場面が
これでもかこれでもかと連続する。同時にプロレスの本質たる
見せ物性もつよくて、どんなに凄惨な場面でも見物人は
決して深刻にならない。客席から飛ぶ野次も、男子プロレスより
すぐれて文明的な気がする。
長い茶色い髪の毛を鷲掴みにして、ぐるぐる引きずり回したり。
ロープ最上段から容赦なく相手の身体めがけて飛び降りたり。
胸もとに激しいチョップの連打。すさまじい音が響いたとき、
ひとりのオッサンが「嫁入り前の娘に、なんてことするんだぁぁぁ!」
と叫ぶ。叫んだあと、にやにやして周囲を窺っている。
ナイス野次!とでも言いたげに、拍手と爆笑が連鎖する・・。
このようにして、女子プロレスラーは、けなげにも、
後楽園ホールという手狭な戦場に充満する男どもの野卑な視線に
立ち向かっているのだった。
ところで、「なでしこジャパン」というネーミング。
「なでしこ見た?」「なでしこ優勝するとは」「なでしこすごすぎ!」
いまや「ジャパン」を省略して「なでしこ」だけで
会話が成立するくらい人の口の端にのぼっている。
けさの国会でも、「管総理から『なでしこジャパン』へ
お祝いの言葉をいただきたい」という、
質問だかなんだかよくわからない意見が出て、
管さんも嬉々として「先行されても絶対に諦めない気迫が、
素晴らしい結果をもたらした。私もやるべきことがある限りは、
諦めないで頑張らなければならないと感じた」と、
ちゃっかり便乗的に答え、
「なでしこジャパンの戦いは、国民皆に勇気を与えてくれた」
とのコメントまで出した。国家は女子サッカーを認知した
ということか。
朝のワイドショーでは小学校4年生のサッカーの天才少女が
取材に答えて「いつかわたしもなでしこになってゆうしょうしたい」
と表明していた。
そうかそうか、大きくなったらなでしこになるんだね、きみも。
調べてみたら、「なでしこ」は美しい薄紫の花を咲かせる
野草の名前でもあるけれど、日本神話に登場する神さまの名でも
あるそうです。漢字で書けば「撫子」。撫でるように慈しんで
育てた娘、という意味。てのひらを返すようにちやほやする世間は、
「撫子」の名にふさわしく、頭をなでなでしはじめたと
言えるのでしょうか。
さて、初日早々、更新が遅れ、お恥ずかしい仕儀になりました。
クレジットは7/20ですが、気分は7/19ということで
ご海容いただいて、また明日、いや、今日。
(20110719)
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