悲しみが止まらない
ウォシュレットが止まりません。
「考える人」の体勢で「水勢=強」のまま、
僕はもう、数分間おしりを洗われています。
◆
街を歩いていたら、ウンコしたくなって、
そこらへんのパチンコ店で、トイレを借りたのです。
用を済ませ、「おしり洗浄」ボタンを押しました。
便座の脇に操作盤があるタイプではなく、
壁にリモコンがついているタイプです。
「おしり洗浄」を押した瞬間、
リモコン画面の液晶が消えました。
電池が切れたのか、その瞬間に故障したのか、
理由はわかりません。
リモコンは操作不能…
しかし、ノズルは僕の黄門さまに狙いを定め、
シャワーを発射しはじめました。
「やばい。 ウォシュレットが、 止まらない。」
すでに、僕の汗も止まりません。
「止」を強く連射してみても、だめ。
リモコンを叩いても、だめ。
リモコンを壁から外して、裏のフタ開けて、
電池をクルクルやろうと思いましたが、
壁からリモコンが外れません。
パチンコ店のスピーカーからは、
杏里の「悲しみが止まらない」が
大音量で流れていたような気がします。
・
・
もう、 逃げるしかないと思いました。
一気に立ちあがり、
便座のフタを閉める作戦を思いつきました。
サッとおしりを上げたその瞬間、
ウォシュレットはピタッと止まりました。
「着座センサー」というものがあって、
人が座ってないとシャワーが出ないんですね。
◆
しかし、このままパチンコを打って帰ったら、
さぞかし出玉も止まらないだろうと。
勝負に出ることにしました。
結局、悲しみが止まりませんでした。