「作文だけは上手」
「あんたは作文だけは上手」。
うちの母親の言葉です。
僕がコピーライターをしていることに
原点なんてものがあるのなら
きっと、これがそうです。
大した取り柄もない息子を
母は母なりに不憫に思ったのでしょう。
幼い頃はことあるごとに
「あんたは作文だけは上手だ」と
吹き込まれてきました。
本を読んでいる姿など
ほとんど見たことがなく、
あっても一時期ハマっていたらしい
ハーレクインロマンスだけ。
そんな母親の言うことを
真に受けた僕も僕ではありますが
その後のあらゆる劣等感を
「おれは作文なら書けるもんね」という
よくわからない自尊心で塗り固めながら
そのまんま大人になりました。
もしコピーライターという職業が
この世の中になかったとしたら
自分は今どうやって生きてるんだろう。
あらためて考えると、そら恐ろしくなります。
TCC50周年。
だからというわけではありませんが
コピーライターという仕事を
こうして存続させてきたすべての先輩方に感謝します。
おかげさまで今日も、僕は作文で暮らしています。
…そうそう、母親が幼い僕に
よく吹き込んだ言葉がもうひとつありました。
それは、「あんたはピンクの服が似合う」です。
残念ながらそれは母の大きな勘違いだったのですが
さらに残念なのは、僕がその言葉を
15歳くらいまで心から信じていたことです。