リレーコラムについて

山中貴裕と愛すべきデザイナーたち(3)

山中貴裕

もう何年ぐらい前だろう。

お互いに牽制し合いながら、考えて来た企画を発表する。
川島さんは、企画コンテが既に演出コンテだった。
金田くんは、圧倒的に絵がヘタウマだった。
田中は、案が選ばれないと不機嫌そうだった。
新人の村橋は、説明が訛っていた。
松原さんは、いつもダジャレだった。
福田さんは、説明が選挙演説ぽかった。
みんながみんな、TCCやACCを狙っていた。

そんな企画会議があった日の夜は
よく反省飲み会をしたが、
いつの頃からか、福田さんや松原さんが、
とある若い衆を連れて来るようになった。
ガタイがデカイわりに威圧感がなく、
たまに笑うと柴犬のようで、
ほとんどしゃべらないのに妙な存在感があった。

話を聞くと、兵庫の田舎町で
ずっと野球をやっていて、
これまた田舎にある美大を卒業して
弊社のグループ会社にデザイナーとして入社したという。
以降、ときどき仕事をしたり、ときどき飲んだりしていたが、
あくまでも会社対会社のつきあいで、
何かを深くいっしょにやる機会はなかったが、
三年前、突然、会社を辞めて独立してしまった。

後日、彼から事務所設立のハガキが送られてきた。
その社名を見て、やられた!と思った。

『 ホームランデザイン 竹内堅二 』

こんな名前をつけられたので、
ぼくがライフワーク的に10年以上やっている
高校野球中継の仕事のデザインを頼まざるをえなかった。
阪神タイガース関係の仕事もやってもらっているし、
ACジャパンの野球をモチーフにした
公共広告なんかもデザインしてもらった。
つまり、野球がらみの仕事を総取りしている。
女子プロ野球のCMなんかもつくっているらしい。
野球以外の仕事も、繁盛しているようで、
最近はいっちょまえにトークショーまでやったりしている。

でも、
まだホームランは打っていない気がする。
誰か、打たせてあげてくれませんか?

いいデザイナーは、いいコピーを導いてくれる。
谷口や日比野さんや竹内君と本気でやりあえて、よかった。
本気の「欲望」どうしがガチンコでぶつかるから、
まったく新しい「化学反応」が生まれるんだと思う。
なんか古臭い話をしてるかもしれないけれど、でも、
アプリやらSNSやらコミュニケーションデザインやらも、
背骨をつくる作業は、そこらへんが肝じゃないか?
と思ったりするのは、
古い人間でしょうか?

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来週は、もっと「古い話」をしてくれそうな、山下師匠です。
ぼくが新人賞をとった時、まっさきに連絡をくれて、
銀座の立ち飲み屋に連れてってくれました。

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