おサルさんの思い出。その1
「お前は全然、プロじゃない」
僕が弟子だったころ、何かあるたびに師匠に言われた言葉です。
広告代理店でコピーライターの仕事をしていたとき、
コピー以外の仕事も多く(今考えると、どれも大切なことだったんですけど)
なんか、このままだとコピーとちゃんと向き合わないで終わってしまうんじゃないか。
なんて勝手に思い込んで、テレビのドキュメントで観た
漆塗り職人の師弟関係のような超、ストイックな世界に憧れてしまって
「俺は、やっぱり一流のコピーライターになりたい」
「そのためには、誰か有名な先生の弟子になるんだ!」
と、帰りの電車の横須賀線の中で、おサルさんのように短略的に決意し、
なんとか入れてもらった巨匠コピーライターの事務所でした。
はじめ、師匠はとってもやさしく僕の広告の夢をたくさん聞いてくれて、
いつもお酒を飲みながら「その夢を全部かなえればいい」とニコニコ
とうなずいてくれて、
「俺はなんて、恵まれてるんだ!俺がずっと広告について考えていた
ことは間違ってなかった!!」と、体中に血液がたぎるのを感じました。
が、しかし。
3ヶ月を過ぎたころ、師匠が笑いながら「今日からお客様状態はやめる」
と、言ったのです。訳が分からず「はい」と元気よく僕はこたえました。
すると師匠は「お前はまだ、プロじゃないから」と。
プロじゃない!
プロじゃないって、どういうことだよ。
意味、わかんない。
頭の中が、その言葉でいっぱいになっていました。
この日から、僕の暗黒時代の始まりです。
おサルさんの思い出。その2へ続きます。
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