おなら選手権
少し真面目な原稿が続きすぎた。ここで1つガス抜きをしたい。
先日行われた「おなら選手権」について書いてみようと思う。
「おなら選手権」とは2月14日のバレンタインデーの日に行われた
オナラーたちの熱い闘い。ぼくは「ヘロリスト 日下慶太」として参戦した。
全員が平等な条件であるようにと、試合当日の昼食が試合前日の夜に参加者に配達された。
夜の9時頃に半ばホームレスのような外見の主催者、水内義人が家に届けにきた。
ぼくは仕事で外にいたため、何も知らない子供を寝かしつけている最中の妻が受け取った。
突然、夜にやってきた怪しい男に妻は怯え、子どもも起きてしまい、
どうして知らせておかなかったのかと、こっぴどく絞られた。
弁当はさつまいもご飯にさつまいもの天ぷらに
さつまいものあんかけとおならが出やすい食事となっていた。
試合当日の2月14日の昼休み、1人で会議室で食べた。
ぼくはこの大会に向けてコンディションを整えていた。
4日間うんこを絶っていた。
なので、おならは出そうと思えばいつでも出せる抜群のコンディション。
しかし、試合開始の3時間前、午後5時に強い便意が訪れた。
ここで出してしまっては、本番でおならが出なくなってしまう。
なんとか我慢しようとした。
少し下腹部が痛むがあと3時間なら我慢できるかもしれない。
一度、おならをしてみる。身が出る。
もう一度、おならをしてみる。やはり身が出る。
結局、4回おならをしたら、4回身が出た。
試合中、みんなの前でうんこを出す失態は避けたい。
しかも、試合中に「身が出る」と失格なのである。
というわけで、うんこをしてしまった。
試合3時間前に腸は空になってしまったのだ。
これが緊張というものだろうか。ソチ五輪の選手の気持ちがわかってきた。
今から、急ぎおならが出やすい体に仕上げていかなくてはならない。
もうドーピングしかない。まずはニンニクラーメンを食べて臭いを強くしようと試みた。
ドーピングがばれぬようフリスクを食べて口からの臭いを消した。
さらに、ガスをより体にいれようと空気を吸い込み、さらにコーラをがぶ飲みする。
試合のユニフォーム、白いブリーフを買おうとコンビニを探すが、ない。5軒回ったがない。
ボクサーブリーフかトランクスしかないのである。
コンビニから白いブリーフは駆逐されてしまったようだ。
結局、百貨店にてようやくゲットして、いざ東成の商店街の果てにある試合会場へと向かう。
ブリーフを探していたために少し遅れてしまった。
オナラーたちはもう到着していた。
大阪のインディーロック界の若きカリスマ、オシリペンペンズの石井モタコ、
巨漢ベーシストのMACOMAGMANIAC、
アソコと肝っ玉の大きさは誰にも負けない船川翔司、相手に不足はない。
審査員はおなら選手権の主催者であり、大阪現代美術の奇才、水内義人
オシリペンペンズのスーパーギタリスト 中林キララ
バイセクシャルのイケメン占い師、竹内カロン
と豪華審査員である。
会場の狭い立ち飲み屋に観客も15人はいるだろうか、会場はおならを期待している。
ここでルールを記しておこう。
・一回分の総合得点の高さを競う。
・審査委員は、各最高得点5点満点の、
表現点、技術点、おなら臭点の3項目の総合得点によって審査する。
試合の流れ
1、スタンバイ
おなら待ちしてる選手が準備ができた合図とする。
ここからマイクの前
2、サイレンス
おならをちゃんときくために、発射前の静寂と緊張感をオーディエンスに促す合図。
3、ゴー!
発射OKの合図
4、バキューム
においなどの審査後、すばやくマイク付近に設置された掃除機でおならを吸い込む。
5、審査
審査委員とオーディエンスによる審査。
◯優勝者
・当日のお客さんの入場料(一人590円)の総額から、
審査委員に払うギャラと、配給用の食事代(主に芋代)を引いた賞金の授与。
・オナフィー(おならのトロフィー)贈呈。
私は、パキスタンとアフガン国境の町、
ペシャワール購入したターバンとサングラスを頭に被り
「ヘロリスト」として参戦した。
身につけている者はターバンとサングラスと白ブリーフのみ。
おならのにおいが強く出るようにと、
ブリーフの後ろ前を逆にし、
パンツの穴からダイレクトにおならが出るようにと工夫をした。
いざ、試合が始まった。
ドーピングのおかげで便意ならぬ屁意は確かにある。
まず1番目に屁を出そうと手を挙げた。
ステージにあがる。
固定されたマイクに尻を近づける。
おならを出す態勢をとる。
スタンバイOKだ、
「ゴー!」の合図が出る。
しかし、出ない。きばっても出ない。
緊張してしまった。屁意がへっこんでしまった。
オーディエンスは、「ああ」と失望する。
次に石井モタコがステージに立つ。しかし、出ない。
「これは完璧にメンタルや」と彼も緊張にやられたようである。
他のメンバーもなかなかおならを出せない。
しばらく、沈黙が続く中、おならをもっと出すようにと
選手にはサツマイモが配給された。
イモを食べた効果からか、屁意がまた訪れた。
そして、二度目のステージに立つ。
しかし、出ない。絶対出してやると思い、思い切り気張った。
小便が少し出ただけだった。
しばらく沈黙が続く。
おならを楽しみにしていたオーディエンスも
「おなら選手権なのにおならが1発もきけないじゃないか」と失望を露にする。
ここで、第1クォーターが終った。
おならを出せないオナラーたちに批判が集中したが、
選手側も主催者側に駆け寄った。
屁意がおとずれたら、すぐに屁を出せるようにしてほしい。
ステージに立ち、ゴーサインを待っている間に屁意が消えてしまう。
さらに、人それぞれ屁が出やすい態勢があるので、
マイクをマイクスタンドに固定するのではなく
自由に動かせるようにしてほしい、と要望したのである。
この要望は通り、第2クォーターからは、手をあげた選手にマイクを渡し、
選手のタイミングでおならが出せるようになった。
第2クォ—ターが始まった。
みなそれぞろが、それぞれのポーズを取り、屁を出そうと格闘している。
おなら選手権は、相手との闘いではなく、自分との闘いなのである。
またぼくに屁意が訪れた。
手を挙げる。マイクをとり、尻に近づける。観客は沈黙する。
「シュッ」
わずかながら屁が出た。
すぐ横にいた出場選手はきこえたが、
観客と審査員までにはきこえなかった。
点数は45点満点中15点と低かったが、一発目の屁を出すことができた。
続いて、石井モタコが挙手をする。
マイクをとり、尻に近づける。観客は沈黙する。
「ブッ」
短いながらも小気味よいおならが出た。
観客に確かにきこえるおならであった。
点数は20点。
さらに石井モタコが続けておならを出す。
「ブリッ」
いい音だった。これぞおならというおならだった。
点数は25点。
今度はぼくに屁意がおとずれた。
ぼくは日常生活でおならを出すようにとリラックスを心がけた。
心も肛門もリラックスと念じながら。
「ブリブリッ」
いい音が出た。肛門に緊張がないからこそ出たよい音だった。
会場が沸いた。審査員がぼくの屁をにおいにくる。
点数は26点。
最高点だ。表現点、技術点は高い。
しかし臭点がゼロ。そう、臭いがなかったのである。
ずっと四つん這いになってイモと芋焼酎を交互に体に入れながら
屁意を待っていた巨漢MACOMAGMANIACがついに動いた。
まるで、神にでも祈るかのように土下座をしながら、おならをする。
「ブリ」
うんこが一緒に出たかのような重たいサウンドだった。
音量は小さかったのだが、臭いがえげつなかった。
27点という最高得点をたたき出した。
第2ラウンドが終った。
おならはたくさん出た。ルールの改訂が功を奏した。
第3ラウンド。
早速、石井モタコがすばらしいサウンドの屁を出した。
しかし、臭いがなかったのと、間がよくなったという理由で
25点。まだMACOMAGMANIACはトップである。
ぼくはサツマイモを食べ、腰を細かく振りながら、屁意を待つ。
来た、大きな屁意が来た。
挙手をする。マイクを尻にちかづける。観客は沈黙する。
「ブッ ブリブリブリ ブ」
音量、長さとも最高の屁が出た。
オーディエンスは拍手する。
これは、よかった。
点数は28点。最高点だ。
しかし、臭いがなかったのである。
もし、臭いがあれば40点台までいけたかもしれない。
試合直前にうんこをしてしまったのが響いている。
と、ここで、岡内由里選手が参戦した。
バイトがあったので遅れてやってきたのだ。
彼女は(そう女である)遅刻の不利を解消するために
きょう一日分のおならを一升瓶に詰めてもってきた。
いざ、蓋をあけた。
アルコールとおならがまざったえもいわれぬ臭いがした。
点数はなんと30点。最高得点だ。
これは反則ではないか、と訴えたのだが、
ルールブックにそれはなかったと退けられる。
第3クォーターは終了した。
続いて、最後のクォーターが始まった。
もう、みんなガスを出し切ってしまったのか、
なかなか出ない。
ぼくも1発出したのだが、19点だった。
試合は終了した。
第1回おなら選手権は岡内由里が優勝した。
オナフィーを授与された。
試合終了とともに、MACOMAGMANIACは床に崩れ落ち、
そのままゲロを吐いて意識を失った。飲み過ぎたのだ。
おならを一発も出せなかった船川翔司は
自分の不甲斐なさにショックを受けていた。
試合後、一言も話すことができなかった。顔面蒼白だった。
死闘だった。
悔しかった、本当に悔しかった。
試合直前に出してしまった、うんこ。
うんこを我慢しすぎた。3日間が限界だったのかもしれない。
コンディションの調整ミスが今回の敗因だ。
ニンニクラーメンもすぐには効果が出なかった。
翌日の朝、にんにくくさいおならが出た。
また近々第2回が開催されるという。
次はリベンジせねばいけない。
闘いが終った今も、おならをするごとにその音と臭いをつぶさに確認して
来るべき大会に備えている。
それにしても、普段恥ずかしいと思っているおならを、
人前で堂々とし、さらに拍手喝采を浴びるというのはえもいわれぬ快感であった。
人間なら誰しもオナラーになれるのだ。
こんなバカな記事を最後まで読んでくれたあなたと
いつかおならを交わし合いたい、とおしりの底からぼくは思う。
なお、おなら選手権の模様は ustreamで放映もされていた。
以下にアーカイブがあるのでぜひイモを食いながら見てほしい。
http://www.ustream.tv/recorded/43806033
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