リレーコラムについて

ネーミング権の放棄

小出ななみ

前走朝子さんコラムにもありましたが、
私も「電通 おかんカンパニー」に属しております。
その悶々とした素晴らしき日々については
朝子さんが書いてくれたので、
軽めなお話をします。

コピーライターがその能力を発揮する、人生のある場面。
「子どもの名付け」。
みなさん、素敵な作品を生み出してらっしゃいますね。
子役オーディションなど行きますと
いわゆるキラキラネームたちが勢揃いするわけですが
なんの、コピーライターの子どもたちも
ベクトル違いのキラキラですよ。
私は好きです。

さて、自分の番がやってきました。
結論から言いますと、
私は、一切子どもの名前は考えませんでした。
子どものネーミング作業にはノータッチで行こう、という
戦略を立てたのです。

途中までは、ちょっと考えてはいたのです。
これと言ったものが出てこなかったせいもありますが、
妊娠7〜8ヶ月ぐらいのときに考えるのをやめました。

だって・・
「産む」作業だけで、女の作業分担は十分だと思ったのです。
母親は自分の血やら細胞やらを使って、
10ヶ月かけて腹の中で育てる。
母と子の絆なんてバリバリになるに決まっています。
10月に産んだのですが
その年は猛暑と呼ばれていて、
産休前に来た夏は本当にしんどかったです。
梅田から会社まで歩くのに、
途中で喫茶店に寄っていました。
レーコ?を飲みながら関西弁で言うと
「もうええやろ」と思ったわけです。

これでネーミングまで自分が分担したら、
ウチの夫は何すんねん、と。
夫を非難するのではなく、
子どもの人生における大事なことに
男が関われることと言ったら、
ネーミングぐらいしか
無いのではないかと思ったのです。

身籠るのも女。
産むのも女。
乳やるのも女。
おむつ換えるのも女。
会社休むのも女。
病気になったら看病するのも女。
私はそれで良いと思いました。
どうしようもなく
そういうふうにできている。
それは女の苦しみだけど、喜びでもある。

加えて、もし顔が私に似ている子が出てきたら、
父親の存在が薄くなるばかり。
「ホントに俺の子かしら」などと思われてもやっかいだ。
生まれたら、夫には子どもをかわいがって欲しいなあ。

そんな理由で、ネーミング権は夫に渡しました。
夫から出て来た名前を、私は気に入りました。
いくつあるうちの、夫が第一候補に上げたものに決めました。
夫が一生懸命考えた名前は、良い名前です。
4年も経つとそれ以外の名前だったら
しっくりこなくなるぐらい、
名前はその子のものになります。

娘はとうとう、自分の名前が書けるようになりました。
ポン・デ・ライオンも、描くようになりました。
言葉は素敵ですね。
絵も素敵です。
アートディレクターもコピーライターも
素敵な職業だと思います。

私の戦略は正しかったと思います。
腹から出て来たウチの子は、
見事なまでに私に似ていたので。

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