リレーコラムについて

新生児はかっこいい

石田文子

こんにちは。
育休中で、すっかり赤ちゃんの
奴隷と化している石田です。

最近、首が座りはじめたうちの子が、
タテに抱くことを要求するようになってきました。
寝た状態じゃなく普通に景色を見たいようです。
うっかりヨコに抱いてしまうと
「ヨコじゃない!タテだ!」
と逆上されます。そして
「はやくタテに揺れろ!」
とタテノリを強要されます。
しかも、フン!と足を踏ん張って
頭突きをかましてきます。
ヘッドバンギングでしょうか。実にパンクです。
足を斜め上にピーンとあげるのもブームらしく、
「さぁ、起っきしようかー」
と寝ている彼を抱こうとするとドス!ドス!と
おなかを蹴り上げてきます。
いたた。そこは帝王切開の傷口だからやめて。
あぁ、こんなにかしずいているのに
なんで反骨精神まるだしなのか。。。
謎は深まるばかりです。

あ、すっかり話がそれて愚痴っぽくなってしまった。
今日は「新生児」というテーマで
書こうと思っていたのでした。

昨日、生まれたての赤ちゃんを見て
“我が子”というよりは、
神さまから預かった“授かり物”のように感じた。
と書きましたが、
新生児というのはほんとに不思議な生き物です。
そもそも手足をモゴモゴ動かすくらいで
自分ではなんにもしない。できない。
よくあんな無防備な状態で
生まれてこれるものだなぁ、と
その度胸には感服してしまいます。
ぜーんぶ誰かにやってもらう想定ですもん。

通勤ラッシュの銀座線で
すし詰め状態になっている
ハゲ散らかしたおじさん達(失礼)も
全員がその「ぜんぶ誰かにやってもらう」
という難関をくぐりぬけてきたのかと思うと、
なんとも感慨深い。むしろ奇跡。
いざ自分が「ぜんぶやる」側に立ってみると
彼らを育て上げたすべてのお母さんを
猛烈に尊敬せずにはいられません。
お母さんって、ほんとすごいよ、お母さん!

しかし、そのなーんにもしない新生児が、
いざ毎日間近で見てみると
不思議とかっこいいのです。
目も見えてなくて
「空腹」と「快・不快」くらいの
本能的な欲求のみで
ただひたすら無心で生きている。
なんというか、もう、がむしゃらに
「生きること」だけを全力で生きている。
その姿は、なんだか潔くて
神々しくさえありました。
まだ人間になりきっていない、
神さまと人間のあいだ、という感じ。
見えていない目は
ときどきぜんぶが見えているようで。
なんにも考えていない顔は
逆に悟りを開いているようで。

そんな希少な“神さま期間”は
そう長くは見られません。
いろんなものを目で追うようになり、
「楽しい」「嬉しい」なんて感情が
でてくるとどんどん人間らしくなってきます。

生後1ヶ月半ぐらい経ったある日。
ふと見ると、うちの神さまが
昨日までと何か違っていました。
「あれ?なんか存在がベタになってない?」
と、ばあば(うちの母)に言ったら
「あ、私も思った。人間になったよね」

その時が、うちの子が
地上の人になった瞬間だった気がします。

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