リレーコラムについて

『蒲田行進曲』

松井琢磨

あるコピーライターのウィタ・セクスアリス

第3回『蒲田行進曲』

リア・ディゾンブームが来ている松井です。

さて今日も引き続き、
青春時代に僕を「刺激」してくれたものたちを懐かしむのが
セクスアリス的本コラムの趣旨でして、

第3回の今日は、「銀ちゃん、カッコいい!」
の名セリフで知られる『蒲田行進曲』です。

蒲田行進曲といえば、つかこうへい原作にして、
深作欣二監督がメガホンをとった日本映画不朽の名作なわけですが、

僕にとっては、松坂慶子さんを意味する言葉でした。

ある夏の日。うだつの上がらない大部屋俳優「ヤス」のアパートに、
映画スターの「銀ちゃん」がやってきます。一人の情婦をつれて。

この女を演じていたのが、松坂慶子さんでした。

雨が振り出すのをきっかけに、
銀ちゃんは女を脱がし、ヤスの目の前で「情事」を始めます。

初めは必死で抵抗していた女も、だんだんと感じ始めてくる。

いわゆる濡れ場、というやつです。

このシーンが、僕には衝撃的でした。

あんなにも嫌がっていたのに、
なぜ途中から、さも気持ち良さそうに男を抱きしめるのか。

ありがちな設定から来る道理のなさと、
松坂慶子さんの身体が描く妖しい曲線。

頭を角材で殴られたようなショック。

真っ暗闇の映画館に、
彼女の白い体が浮かび上がっていました。

隣に座っていた母親を意識しながらも、バクバクと動き続ける心臓。

ようやく物心ついた6歳男子にとって、
松坂慶子さんは、はっきりと、見事なまでに女だったのです。

※ 映画『蒲田行進曲』。つかこうへいが戯曲として仕上げたあと、
自らの手で映画用に書き直した。松竹と角川春樹事務所の共同制作。
この作品で松坂慶子は日本アカデミー賞最優秀女優賞に輝いた。

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