リレーコラムについて

ダーリンは中国人:「ありがとう」のかわりに、何しよう?

小森谷友美

はじめまして。

木村敦子さんからバトンを受け取った、小森谷友美です。
「すべてのママは、働くママだと思う。」というコピーで、
2015年にTCC新人賞をいただきました。

2015年は新人賞と同じくもうひとつ、
人生で最初で最後の大きな変化がありました。
結婚です。

しかも、私のダンナは中国人。
今回の5回分のコラムは、日中でのことばの使いかたの違いを、
いままで誰にも話していない夫婦小話をまじえてご紹介します。

その中華テーブルには、回鍋肉、麻婆豆腐、水餃子、北京ダックなど、
大きなテーブルにおさまりきらないほど食べ物が並びました。
まるで烏龍茶のCMみたい。

これは、私がはじめて中国の彼の実家に行ったときの話。
お腹パンパンになるまで、滞在中の5日間、
毎日私はご馳走になりっぱなしでした。
(持ってきたショートパンツが入らなくなりました。)

私はどうしても感謝の気持ちを伝えたくて、
毎回「謝謝」と「ごちそうさまでした」を繰り返しました。

でもご両親は、困ったように笑うばかり。

感謝の表現が足りないのではないかと思い、
「このエビは味にコクと深みがあって感動しました」など、
食レポ並みな言葉を使ってみたりしました。

しかし、他の人も交えた会食で気づいたのです。
ご馳走されても、誰も「ありがとう」と言わないことに。

じつは中国では、親しい人ほど「ありがとう」を使わないのだそう。
近い関係でわざわざそれを言うのは水臭く、
距離が遠い関係の証になると考えるらしいのです。
2度と付き合いたくないという意思表示としても使われるくらい、
「ありがとう」は超デリケートな言葉だったのです!

それでは、「ありがとう」のかわりに、何をしよう?

そこで私が思いついたのは、日本料理をつくること。
北京でもなんとか食材が揃いそうだった、
天ぷら・茶碗蒸し・炊き込みご飯・味噌汁・お新香をつくり、
ご家族をもてなしました。

天ぷら、ちょっと柔らかかったかも。
味噌汁って口に合うかな?
私の心配をよそに、家族はとても、よろこびました!
でも、「ありがとう」とは言いませんでした。
そのかわり私がたくさん聞いたのは、「また一緒に食べよう」。

そう。
中国で親しくなりたい人ほど「ありがとう」と言わない理由は、
自分がご馳走をして返し、
次に会う機会をもちたいという気持ちもこめられていたのです。

もうあれから4年。
中国のお父さんとお母さんとの「おごり・おごられのループ」は、
何十往復をしたでしょうか。
これからも、たくさんのおいしい思い出をつくりたいなあ。

☆明日に続きます☆

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