コピーライター ☓ スピード
タカハシマコト
言葉は、もともとスピードの速いコンテンツ。
たとえばネットでの「炎上」と呼ばれる現象、つまり猛烈な速度での拡散は、ツイッターや2ちゃんねるといったテキスト中心のメディアで起きることが多い。言葉でリアクションするのは、誰でも簡単にできるからです。
SNSで数多く拡散した「保育園落ちた日本死ね」や「センテンススプリング」といった言葉は、おそらくさまざまな流行語大賞にランクインするはずですが、「流行絵大賞」はありません。
とはいえ、直近5年間の『新語・流行語大賞』で広告発の言葉(コピー)が入賞したのは、2013年グランプリの「今でしょ!」と2011年トップテンの「こだまでしょうか」くらい。以前と比べて広告の言葉が世の中に拡散・流通しづらくなっている背景については割愛しますが…本来的には、広告コピーは拡がるパワーとスピードを持っているはずなのです。
だから、コピーライターはもう少し「SNSユーザーのスピード感」にギアを合わせたほうがいい。でも残念ながら、五輪エンブレム問題がネットですさまじく炎上したため、ちょっとずつ近づいていたマス出身クリエイターとネットユーザーとの距離がふたたび開いてしまった。悲しいことです。
5年前の春、震災後の自粛ムードの中、東北の日本酒蔵元を集めて「自粛せずにお花見をしてほしい」と呼びかける動画を制作、You tubeで公開しました。TCC審査委員長賞もいただいた「ハナサケニッポン」というプロジェクトです。
3月29日(水)に当時の都知事による花見自粛要請が報じられ、SNSで議論が起きた翌日に企画書をまとめて蔵元を探し、撮影して編集。4月2日(土)に動画をアップして、週末のお花見にも間に合った。
この時、ひとりの蔵元が語った「経済的な二次被害」という言葉は、SNSだけでなく新聞、テレビなどへ瞬く間に拡がっていきました。
「今、盛り上がっているもの」を見つけて、世の中が熱いうちにリアクションする。たとえばそんなやり方も、コピーライターの仕事の幅を広げるはず。
厳しく言えば、ネットユーザーの速さに「置いていかれないようにする」のは、コピーライターに今いちばん求められることかもしれません。言葉のプロである限り、かなり期待できるかけ算だと思うのですが。
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