スキャムとスカム
「スキャム」。広告業界で昨今よく聞く言葉です。
scam、原義は「詐欺」とか「まがいもの」という意味で業界では
「賞狙いの偽広告」、ようは、作ったけど、どこにも発表されてなかったり、
テレビCMと称して深夜に一回放送されただけのものとか、
賞ビデオは立派だけど、その中に虚偽があったりとか、
そういうのが代表的なスキャムだ。
さて、実は、音楽業界にも似た意味の言葉があって、
そちらは「スカム」。もっとも綴りもscumのはずなので
根本的に違うことばなのですが、
(ナパームデスの名曲にあるSCUMも関係しているか?)
なかなかどうして、意外にこちらも「糞」とか「屑」とか
近からずも遠からずな意味なのです。
アンダーグラウンドなバンドかいわいで、
演奏のテクニック度外視、ド下手な演奏力を逆の意味で武器に、
奇をてらったことをやりまくるミュージシャン、
いや、まぁ、大抵そういう奴らはミュージシャンとも呼べないのだけど。
そういう人たちがスカムバンドと呼ばれていました。
何もこのシーンはまったくのアングラなわけでもなく、
たとえば有名なところでは少年ナイフとか、
いや、しかし、少年ナイフをイメージにもたれると、
少し話が違ってくるのですが、ちゃんとしてるから。
さらに例えば、僕の好きなのは、ほぶらきんというバンドで、
これはメンバーに小学生がいたりする。
あとは、「ホワイトマン」という曲を歌う突然段ボールというバンドも好きで仲間とよくワーワー歌ったりしていたものです。
さて、御多分にもれず、僕のやっていたバンドも
このスカムバンドにカテゴライズされていたのですが、
ライブ中に布団を持ち込み就寝しながら歌う、
テントを持ち込みみんなでテントの中で演奏する、
ライブ中に酢飯を作りながら演奏する、ライブ中に湯葉を投げる、
口から噴出したピンポン球によりスネア・ドラムを叩く、
などしていたのですが、ある時を境に僕はこのバンドを脱退します。
それは、ある時のライブハウスのマネージャーの一本の電話でした。
対バン相手が決まったことを告げるその電話、
第一声が「マキタスポーツさんと対バン決定です!」。
その勢いに呼応するかのように僕は、
「マジっすか!?ありがとうございますっっっつ!」と
実に大学生らしい返事をしていたのでした。
ガッツポーズまでしていたかもしれません。
しかし、電話を切り、ガッツポーズをしていたとすれば、
その拳を眺めながら、我に返ってこう思いました。
「両親にお金払ってもらってまで大学院に進んだのは、
マキタスポーツと対バンするためだったのか…?」
かくして、僕は就職活動をし、CM・プランナーになることとなります。
スカムバンドに幸あれ。
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