地獄の設定についての、とある説。(上)
「いやぁ〜昨日の飲み会地獄だったわ〜」と大学生が言う。「3徹して地獄だった・・・」と若手社員がいう。「鬼のように忙しい」と忙しくない人がいう。「鬼ムービー。」と鬼ムービーの人が言う。今や、地獄や鬼は生活の中に溶け込んだなくてはならないものになっています。
しかし、始原、地獄とは、もっともっと恐ろしく、人々は、地獄に落ちたくない一心で善行をツムツムしていたものです。事実、いかに地獄を回避する事ができるかが、多くの仏教において、信者勧誘の大きなチェックポイントの一つであったわけです。
どうして、地獄の概念は現代においてこんなにポップな文脈で使われるようになったのでしょうか。それはその概念の設立に日本人の演芸的なバックグラウンドが大きく関与しているからと僕はにらんでいます。地獄の細かい概念までを語っていると日が暮れるので、何をすると地獄に落ち、地獄でどんな罰を受けるのかをいくつかの例とともにさらっとおさらいしましょう。
まず、酒を飲んで楽しむ人は地獄に落ちがちです。例えば、飲み会にいって、人に酒を勧め、その人のことを少しでも笑ったら、地獄決定です。火雲霧処(かうんむしょ)という地獄に落ちます。ここでは、地面から100mの高さまで吹き上がる炎の熱風で舞い上げられ、空中で回転し、縄のようにねじれ、ついには消滅してしまいます。もちろん地獄は無限コンテニューなのでこれが1兆年以上続きます。
また、殺生すると、地獄に落ちます。それは、哺乳類だけでなく虫とて同じ、等活地獄で永久に切り刻まれつづけます。これも1兆年以上。
他にもちょっとエッチなことしたら、性器を鈎で引き抜かれたり、銅を飲まされたり、また、嘘をついて上司を陥れると、斬られたところに草を植えられ、成長すると引き抜かれる、などというテクニカルな地獄もあります。最悪なのは、おなじみ無間地獄で、両親や聖職者を殺害すると陥る地獄ですが、ここでは、概算、349京2413兆4400億年責め苦を受け続けます。ここに比べると他の地獄は夢のような幸福である、とのことです。
と、僕はこの地獄の設定に、ある妙な親近感を覚えました。これこそが、地獄をポップなものにしてしまっている根源だと考えています。
一体、その親近感とはなんなのか?
長くなったので次回へ続きます。
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