リレーコラムについて

ただしくん2

上田浩和

ただしくんと言えば、ライザップですね。
審査委員長賞はうらやましい限りです。
スタッフリストにぼくの名前も加えてもらえないでしょうか。
結果にコミットする。
のうち、「結果にコミットする」までは
ただしくんが書いたことにしてくれていいから、
最後の「。」は、ぼくが書いたことにしてほしいのですがだめですか?
そういうコミットの仕方はだめですか?

最近、ただしくんに会うたびに提案していることがあります。
ライザップのCMのパロディなのですが、
最初は、ただしくんが回っています。
コピーが書けなくてうなだれています。
ペンを持った右手はだらりと垂れています。
足元には丸められた紙くずがたくさん落ちています。
そして、あのきらびやかな音楽を境にして、
中村直史くんから、中村禎さんに変わる。
中村禎さんは、いいコピー書けた!って感じで満面の笑み。
というものですね。
宣伝会議のコピーライター養成講座のコマーシャルに
ちょうどいいんじゃないかと思っているのですが、
この話をするたびに、ただしくんは腹を立てています。

これを読んでいる人ならご存知だと思うのですが、
コピーライター業界には、二人の「なかむらただし」がいます。
すごい方のなかむらただしと、
すごくない方のなかむらただしです。
すごい方は、もちろん中村禎さんですね。
禎という漢字をみると、元ジャイアンツの吉村禎章を思い出すのは、
ぼくだけでしょうか。
そして、すごくない方が、ただしくんだったわけです。
ぼくはそのことがたいへんうれしくて、
そのことでずいぶんとただしくんをいじってきました。
そしたら今回の審査委員長賞ですよ。
ただしくんも、すごい方のなかむらただしになってしまいました。
でも、すごいなかむらただしは、二人もいらなくないですか?
業界的にややこしいし、ひとりで十分じゃないですか?
だから、ただしくんには、速やかにすごくない方に戻って欲しいのです。
じゃないと、悪口も言いにくし、陰口も叩きづらいし、
バカにするのにも気を遣ってしまいます。
この賞をきっかけにして、
ただしくんにはぜひ調子にのっていただいて、天狗になってもらって、
「この長い鼻、これ、ペンだから。
上手にコピー書けるペンだから。
これがあればいつでもいいコピー書けんだよね」
とか言っちゃうような九州のコピー天狗になってもらって、
後輩にばかり書かせて、自分ではろくに書かなくって、
10年後、コピーが下手になっていることに気がつき、
慌ててコピーライター養成講座に通うけど、
すごいなかむらただしにはもう戻れなくて、
そのまま五島に帰ることにして、
毎朝、海岸に行って、韓国から流れてくるゴミを回収して、
リサイクルショップに売りに行くことで生計を立てるような、
そんなコピーの下手な男に、ただしくんには是非なってもらいたい。

下手って字を見ると、下手投げを思い浮かべて、
元ジャイアンツの鹿取を思い出すのはぼくだけでしょうか。
やっぱあの当時の、青い稲妻松本がいて名手篠塚がいて、
セッコーチョー男中畑がいてクロマティがいて、
原がいて吉村がいて、右の抑えの鹿取がいて左の角がいて、
という時代の巨人はよかったなあ。
角盈男の「盈」って漢字にみょうに魅かれてたなあ。
一度、熊本の藤崎台球場での試合中、
クロマティが乱闘事件を起こしたことがあり、
そのとき外野席のファンたちがフェンスを乗り越えて、
いっせいにグランドになだれこんだのですが、
実は、そのなかに、まだ小学生だったぼくもいたのです。
しばらくは、そのことを自慢してたっけなあ。
そんなぼくも今ではすっかりカープファンです。

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