リレーコラムについて

サハラ砂漠のまんなかで④

大石将平

砂漠の孤独感には勝てない。
そんなことを感じました。

それは、砂漠に着いた初日の朝のこと。

その日の朝、宿の朝食を済ませ、
オプションの砂漠ツアーに申し込みをしました。
出発は夕方。

部屋で休もうかと、一階のリビングにいると、
昨日の夜に出会った日本人夫婦と大学生が
宿をチェックアウトし、去っていくところでした。

ちょうど居合わせたし、見送りでもするかと、
軽い気持ちで、宿の外へ行き、
タクシーに荷積をしている彼らを見ていて、
急に不思議な感情が芽生えてきました。

「頼む!いかないでくれ!」

思わず、そう言いそうになっていました。
昨日の夜、出会ったばかりで、
ほとんど会話もしていない人たちなのに、です。
もう何年も連れ添った恋人との別れのような、
なにか大きなものを失ってしまうかのような、
猛烈な寂しさと喪失感を感じました。

自分は、ひとりでも平気だと自負していたのですが、
砂漠では話が違いました。

宿には自分とオーナーの現地人のみ。
話し相手はいない。ネットはもちろんテレビも何もない。
あたりには、ちいさな集落があるけどお店はない。

「自分はいま、だれともつながっていないんだ。」
その事実は、想像以上に恐ろしいものでした。

宿で過ごす時間でさえ、こんなに孤独を感じているのに、
砂漠のまんなかにたったひとりで行ったらどうなってしまうんだ。
ものすごく不安になっていました。

「もし、このままひとりで砂漠に行くことになったら、
 ツアーはキャンセルして引き返そう。」

恥ずかしながら、そんなことを本気で思っていました。

日本から約12,000km離れた国で、
自分の弱さを思い知らされたのです。

結論から言うと、砂漠には行きました。

お昼を過ぎた頃に、ひとりの大学生と、
ふたりのバックパッカーが宿に到着し、
「ひとり砂漠ツアー」は免れることになったからです。

そして、夕方。いよいよ砂漠に出発です。
宿の外には、人数分のラクダ。
彼らに乗って砂漠の真ん中を目指しました。

日が暮れかかった砂漠は、とても現像的な世界でした。

傾いた日の光が、砂の上に赤茶と黒のコントラストが生み、
風が吹くたびに形を変える砂は、風の動きを見せてくれているようでした。
日が傾くにつれて、刻一刻と変わる砂の色は、
地球の自転を感じさせてくれているようでした。

美しい砂漠の世界を見ながらラクダに乗ること3時間。
砂漠のくぼみのベースキャンプに到着。

だけど、何故かベッドは小屋の外に…。

次週は、砂漠の夜のおはなしです。

4週にわたって書かせていただいきましたコラムも次が最後です。
ぜひ、最後までお読みいただければと思います!

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