先生
小学校のころの担任だった樫村先生は、
少し変わった先生だった。
田中正造をいたく尊敬していて、
社会の授業の大半は
彼の半生を紐解くことに費やされた。
2週間かけて明治天皇直訴文の読解やらされている
公立小学生なんて聞いたことない。
俳句をおしえるときだって、
5・7・5の話も季語の説明もせずに、
松尾芭蕉や小林一茶なんかのページもすっとばして、
手製のプリントのすみっこに載っていた一句を、
だいじそうに黒板の真ん中に書いた。
山から風が風鈴へ 生きてゐたいとおもふ
種田山頭火
みなさん、これが俳句です。
と言って授業を終えた樫村先生。
あれから25年以上たつけれど、
未だに山頭火でラーメンを食うたびに、
あの日のことを思い出す。
先生、いまごろどうしてるかな。