やばい、養命酒は骨折には効かない。
竹田くんが足の骨を折ったと聞いてそう思いました。
独身。一人暮らし(きっと)。
ご飯どうする?
仕事に行ける?
頭の中に絵が浮かびます。
足をギプスに固定されたまま、掃除もままならない部屋で唸っている竹田くん。
でも、親でも恋人でもない私にできることはありません。
頭の中を歌が流れました。
♪Planet earth is blue, and there’s nothing I can do. (“Space Oddity” / David Bowie)
地球のあまりもの青さに、すべてを捨てて宇宙へ消えていく宇宙飛行士の歌です。
科学の粋も、肉体の訓練も、妻への愛すらも無力にさせる青い地球。
そんな地球と竹田くんを重ねてよいのかどうかはわかりませんが、
美しいメロディーのリフレインの中で養命酒を思ったことは事実です。
だけど残念ながら私は養命酒の効能効果を熟知していました。
冷え症・肉体疲労・胃腸虚弱・食欲不振・虚弱体質・病中病後・血色不良。
この7つの効能の他、効き目を謳うことはできません。
この青い地球で、400年にわたり人々の健康長寿に貢献してきた赤い箱の養命酒も、竹田くんを救うことはできない。
私の感じた無力感は、宇宙飛行士のそれと近しいものだったのでしょう。
なぜ私はそれほど竹田くんの骨折に動揺したのでしょうか?
もとより、竹田くんって誰でしょう?
竹田くんは私にリレーコラムを振ってくれた若きコピーライター。
まだ、竹田くんのコラムをお読みでなければ、ぜひご一読ください。
骨折した若者のリアルな体験談は、貴重です。
竹田くんは、たくさんの友人や、苦労も出費もコラムのネタにできるという幸運と技術に助けられ、この困難を人生の肥やしへと昇華させることができたようです。
これが私だったら、と思うとぞっとします。
同年代の友人たちは、仕事や家事に追われ、私を助ける余裕はなさそうです。
私自身、竹田くんに対してそうであったのですから…(ごめんね)。
私でもまだましなのかもしれません。
一人暮らしの、おじいちゃんやおばあちゃんだったら。
一人暮らしじゃなくても、介護や育児で手が放せない人だったら。
竹田くんを救ってくれたインフラにたどり着くことはできるのでしょうか。
竹田くんすら車椅子で苦労する道を誰が押してくれるのでしょうか。
竹田くんのコラムは、社会を住み良くする伸びしろの大きさに気づかせてくれます。
そして竹田くんは今年のTCCコピー年鑑の編集委員長です。
私も編集委員のひとり。
竹田くんが足の骨を折ったと聞いてこう思いました。
やばい、養命酒は骨折には効かない。
同時に思いました。
今年の年鑑どうしよう、とも。
私の動揺は、竹田くんの困難を思ったからだけではなさそうです。
ただ、ただ、年鑑が心配だったのです。 (つづく?)
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