動くな、死ね、甦れ、とか。
公庄仁
ブレーン「名作コピーの時間」用に書いた文章。
文体のせいか、書いてくうちに
後半が湿っぽくなってしまったのでボツにした。
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○メシ喰うな(町田町蔵/1981年)
◯動くな、死ね、甦れ!(ヴィターリー・カネフスキー/1995年)
○ふり向くな 君は美しい(阿久悠/1976年)
「〜するな」という禁止の言葉には強い力がある。
なかでも町田町蔵のアルバム「メシ喰うな」のインパクトは凄い。
断末魔のような声で振り絞る、
“おまえらは全く
自分という名の空間に
耐えられなくなるからといって
メシばかり喰いやがって
メシ喰うな メシ喰うな”
という歌詞を18歳の僕がなぜ好んでいたのか、
もうよく覚えていない。
当時流行していた倉木麻衣などを聞いていれば、
もう少し素敵な青春を送れた気がする。
「〜するな」の後に言葉が続くと、インパクトはさらに増す。
ブルース・リーの名台詞「考えるな、感じろ」もそうだし、
ベルセルクの「祈るな!! 手が塞がる!!」もそうだ。
しかし破壊力だけで言えば、
ソ連の映画「動くな、死ね、甦れ!」がすぐに浮かぶ。
ネットもない時代にこのタイトルを知って以来、
これは見なければとずっと思っていた。
実際に見たら想像とかなり違った。
なんとなく「狂い咲きサンダーロード」みたいなのを
イメージしていたのだけど。
そういえば「狂い咲き〜」も凄いタイトルだ。
「ふり向くな 君は美しい」は、
生涯で最も好きな言葉の一つだ
(正直なところ、これ以外が浮かばなかったので、
他の2作品を「〜するな」つながりで無理やり挙げた)。
“うつ向くなよ
ふり向くなよ
君は美しい
戦いに敗れても
君は美しい”
と歌う高校サッカーのテーマソングは、
この手の歌詞としてはいびつだと思う。
高校野球のそれが「栄冠は君に輝く」と歌うのと対照的に、
はじめから敗北が前提になっている。
けれど考えてみれば誰でも分かるが、
こちらの方が事実に近い。
全国4000校のうち、
勝ち続けられるのはたった一校だけ。
ほとんどのチームはどこかで負けるし、
そもそも3年間がんばっても
試合に出場さえできない選手がゴロゴロいる。
どれだけ努力しようが負けて終わることを
ほとんどの部員は知っている。
せめて、というかむしろ、自分が納得して負けるためだけに
高校生活すべてをサッカー(野球であれバスケであれ)に捧げる。
勝ち方より負け方を教わるのが部活の良さだ
と誰かが言っていた気がするが、
県予選で負けた僕でもそう思う。
その心構えは、やがてコピーライターになり
10年ほど新人賞に落選しつづけた際にも大いに役立った。
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サン・アド/POOL inc. 公庄仁
hitoshi_gujo@sun-ad.co.jp
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