苦楽。
あっという間の、最終日。
なにを書こうかと迷いましたが、再び、
ブログの再掲にすることにしました。
さてこれはいつのものなのでしょう。
調べればわかることなのですが、
大きなバッグを持っていた姿から、
ゴルフの帰りかもしれません。
北千住から自宅に帰るには、半蔵門線につながる中央林間行きの電車に乗る。
区間快速なので、最寄り駅「曳舟」は、次だ。速いのがいいとも限らないの
だが、せっかちなのか、当然のようにこの電車に乗ってしまうことが多い。
北千住からは、浅草行きの電車も来る。この電車は、各駅停車がほとんどだ。
半蔵門線が乗り入れていなかった時代、東武線はすべて浅草行きだった。先週、
北千住からいつもの中央林間行きに乗ろうとしたが、発車してしまった。
仕方なく、各駅停車、浅草行きに乗った。久しぶりというほどでもなかった
がやはり各駅停車はいい。駅を飛ばして走る電車は興趣がない。無粋だよな、
といつもの自分を忘れ、勝手なことを呟き、暗くなった車窓の町を眺めていた。
次は鐘ヶ淵。車掌が気のない声で伝えている。そうか、鐘ヶ淵か。居酒屋の
Hに行ってみるか。なぜか、そういうときは決断が早い。すぐさま降りると、
改札を出て、踏切を渡っていた。Hの場所は、なんとなくだが、記憶にあった。
本当に以前、行ったことがあったのか。自分でもよくわからないくらいHは
久しぶりだった。店の前に立ったが、縄暖簾の入口は、敷居が高い。知らな
い客は、入ってくるなよ、と言っている。そう、その辺は昔と変わらない。
ガラッと戸を開けると、右手にL字のカウンター。左に小上がりが見える。
カウンターの客2人が示し合わせたように私の顔を見る。やや大きめのバッ
グを持っている姿はいかにも外様だ。2人の客の間しか席は空いていない。
酒、肴併せて20種類ほどの品書が壁に貼ってある。酎ハイ290円を頼むと、
白髪の老主人が、慣れた手つきで氷を入れサーバーを操る。昔、酎ハイの炭
酸は瓶、氷はなかったはずだが、さすがに今風になっている。手間も省ける。
昔の酎ハイの味がする。焼酎がしっかり入っている割に、スッキリした味だ。
一口飲んで改めて品書きに目をやる。一番高価なのは、ビール、もちろん大瓶、
570円とある。肴はすべて、このビールの価格を下回る。さて何にしますか。
そもそも居酒屋のHは、学生の頃から知っていた。もう40年以上も前か。
高校の先輩が鐘ヶ淵に住んでいて、サッカーの試合が終わると、集まってい
たのではなかったか。老店主もまだ若かったのだろうがまったく記憶にない。
とにかく安い。当時、百円以下、つまり二桁の肴がある、と先輩たちに聞か
された記憶は鮮明にある。それが行ったことにすり替わってしまったのでは
ないか。記憶とはなんと曖昧なことか。とりあえず、やまかけを注文した。
カウンターの向こうには大型テレビがあり、ニュースが流れている。その下
には、恐ろしくクラシックなGEの冷蔵庫がある。動いているのかどうか、
確認はできなかったが、存在していることに意味があることは間違いない。
時間がこの店の中では止まっている。よく使われる言い回しだが、大型テレ
ビが、小さなブラウン管であったなら、そのまま映画撮影のセットにもなり
そうなしつらえである。いや、まだ保存されている店があったのだな。
しかし、やまかけはいまの味で、美味。二人の常連客は、私を間にしきりに
話を交わしている。それなら席を詰めて座ってくれればよいものをと思うの
だが、外様は黙っているしかない。右に座る客は、必ずいる物知りのようだ。
「また来年、日本に来るらしいけれど、エリック・クリプトンっていうの、
あいつハンパじゃないね、ギターうまくてさ」とか話している。この店では
クラプトンも電球にされてしまうのだから怖い。酎ハイ二杯目を注文する。
居酒屋Hを思い出したのは、もう一つ理由がある。仕事場の近くに「食堂」
を開店した女性がいて、話をしているうちに、彼女の実家がHであることが
わかったのだった。「食堂」の料理がうまいのも頷ける。そうだったのか。
下町、と一括りにしてしまうが、同じすみだでも私の住んでいる向島付近に
Hのような店はなくなってしまった。これだけディープな居酒屋があったか、
とうれしくなった小1時間。酎ハイ2杯、肴2点、1300円の旅であった。
お邪魔したHという居酒屋は
鐘ヶ淵「はりや」といいます。
数年前に閉店しましたが、
去年の暮れに娘さんが、内装に手を入れ、
再び営業を開始しました。
開店してもう1月たちますが、
新しい店に行けないでいます。
気がつけば、もう2月です。
時間のたつのが早くなったような気がします。
今月の末には、東京マラソンを走ります。
3月には、LAマラソンに遠征する予定です。
走ることも、コピーをひねりだすことも、
苦しい、楽しい、の繰り返しです。
これからも仕事を続けながら、
走り続けます。