悩むソウルフード わたしはアイス、ブラックモンブランと云う。
九州で生まれて、もうすぐ50年。
ソウルフードと称されるまでに愛され、
幸福な日々をおくっていた。
しかしひとつ、悩ましいことがある。
『わたしのアイス食べたでしょう?』
(嗚呼どうか。)
(わたしのために争わないでほしい。)
おいしいアイスは食べられてしまう。
そして、諍いの火種になってしまうのだ。
アイスとは、ひとを幸せにするもの。
哀しみを、生んではならぬ。
(要はわたしが、第三者に食べられなければいいのだ。)
天の声が。
−冷凍庫で、擬態すればよいのでは?—
擬態。
それは「食べられまい」という「進化」
コノハに擬態したコノハムシ…
枝のようなナナフシ…トカゲ…
アイスは進化できるのか?
冷凍庫内で、アイスの孤独な戦いが始まったのである。
【アイス進化 第一形態】
「冷凍庫の壁面色」
いわゆる模倣型の擬態。背景に溶け込むのである。
CMYKの微妙〜な色味、青みも研究した。
しかし、あまりにも微妙すぎた。
[却下]-…ただの白いアイスでは?
【アイス進化 第二形態】
「霜」
霜まみれの見た目はどうだろう。
しかし霜まみれの冷凍庫など、
昨今ほぼ都市伝説である。
[却下] -舞台の限界を感じる。
!!作戦変更!!
冷凍庫内で、誰も手を出さないものになるのはどうだろう。
アイスは擬態の文献を読んで学習した。
「ベイツ型擬態」というやつである。
■ベイツ型擬態
姿形を、他の危険な種に似せて外敵からの攻撃を逃れる擬態。
ドイツのベイツさんが発見。
ベニモンアゲハという有毒な蝶に擬態するシロオビアゲハ、
ハチのような色カタチを真似た蛾、鳥のフンのようなイモムシなど。
【アイス進化 第三形態】
「手出しはしない三兄弟」
〜冷凍庫に長期間放置されて霜まみれになった何か〜
正月の残り、お歳暮の残り。
冷凍庫で忘れ去られた存在。
視界には、入りにくい。
しかし「ベイツ型擬態」ならばもうすこし、
警戒して手出しをしない気分が増せないか。
[却下]-ちょっと美味しそう。
そうだ、わたしは佐賀出身。
見た目はやばいが気のいいひとたちを、
ご近所に知っている。
【アイス進化 第四形態】
「有明エイリアンズ」
有明海のお友達、ムツゴロウさん、ワラスボさん。
手は出さない。出さないが…。
こ れ で い い の だ ろ う か。
ワラスボは、あのエイリアンのモデルである。
冷凍庫で遭遇したら確実に泣く。
そして天の声がふたたび。
—景品表示法上、入っていない成分を印刷することはできません。—
……
…
ブラックモンブラン
〜ムツゴロウ味〜
新発売である。
[却下]-大人の事情
煮詰まる冷凍庫、迷走するアイス。
擬態とは何なのだ…!悩みあぐね、ころげまわる。
そして、冷凍庫の隅で、ある方とぶつかった。
運命の一瞬
(なんて、視聴率の無い御方…!)
存在は知っていた、知っていたが。
有と無を含む究極概念、
仏教の「空」とも云おうか。
【アイス進化 最終形態】
「色即是空」
ここです!ここ!ここ!
保冷剤…?実は…ブラモン!
冷凍庫にかくれる!
擬態アイス!
九州に生まれて50年。
ブラックモンブラン、竹下製菓は、
おいしいアイスで誰かが笑顔になることを、
日々祈っています。
ひとを幸せにするアイスで、
食べものの恨みがもう生まれませんように。
NO.2018403
広告主 | ソニー・ミュージックエンタテインメント/竹下製菓 |
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受賞 | |
業種 | 食品・飲料 |
媒体 | WEB |
コピーライター | 渡邊千佳 |
掲載年度 | 2018年 |
掲載ページ | 338 |