父にお年玉 120 娘:父は、昔からせっかちだっ
た。元日ぐらいのんびりす
ればいいのに、朝早くから
(ゆかりーっ、まだ起きな
いのかぁ。)
大きな声で、私を呼ぶのだ
った。
晴れ着姿で父の前に座ると
父:ほらっ、お年玉。
大事に使うんだぞ。
娘:お年玉の袋には、その年ご
とに、(おもちゃ)とか(本)
とか、(人形)とかの文字が
父の筆で書かれてあった。
大事に使えと言いながら、
使いみちまで指示されてい
るようで、反発した時期も
あった。
父が、口ベタの父が
お年玉の袋に託した気持ち
が、今なら分かる。
娘+父:それは、(元気に遊べ)とか、
(いい本に出会え)とか、「女
の子らしく育て」とか…。
娘:父の精一杯の思いだったの
だと、今なら分かる。
SE:(かるた取りの声。
思い出の中お正月の音。)
娘:今年、私は、父にお年玉を
あげようと思う。
袋には、「ウイスキー」とだ
け、一言書いて。
「お父さんと、ゆっくり一
緒に飲みたいな」という
私の気持ちを込めて。
M:「夜が来る」~
娘:お父さん
言いそびれていたけれどこ
のお正月が、お父さんの娘
として過ごす最後お正月
になりそうです。
お父さんとは反対に、のん
びり屋の私にもやっと春が
めぐってきました。
お年玉袋に託した私の気持
ち分かってくれるよね、
お父さん。
SE:コローン、トクトクトク…
NA:春は、みんなに、やってくる。
サントリーニューオールド
NO.4524
広告主 | サントリー |
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業種 | 酒類・タバコ |
媒体 | ラジオCM |
コピーライター | 加藤英夫 |
掲載年度 | 1996年 |
掲載ページ | 61 |
加藤英夫かとう ひでお
1973年入会