日本電信電話 企業 心の扉をたたく音 180 S:心の扉をたたく音。
N:こんなお話を聞きました。
お母さん:お願い。一生のお願い。
うちの悟、半年あずかって。
海外研修の間だけ。
あの子は自分で何でもやるし。
とにかく置いてくれるだけでいいから。
友達だったら、お願い。
森田さん:悟くんは小学5年生。
言葉もしゃべれないほど、極度に内向的な性格の登校拒否児でした。
S:森田真由美さんからの話。
森田さん:都心のマンションでひとりぼっちで
生きてきた悟くんは、確かに、
まったく手のかからない子でした。
笑わず。泣かず。
勝手に買物をし、勝手に食べ、眠り、
そしていつもテレビをみていました。
そんな彼とのただひとつの
コミュニケーションは電話でした。
職場から電話で用件を伝えると、
彼は、受話器をたたいて、
コツコツと了解のサインを送りました。
母親とのきまりだったのでしょう。
いつからか私は、
できるだけ早く家に帰っては、
彼の前に座って、
一方的に話をするようになりました。
学生時代のこと。楽しかったこと。
悲しかったこと。
うつろだった彼の目が、
少しずつ変わってきた気がしました。
そして。私にとってもその時間が、
自分を見つめ直す大切な時間となったのです。
-半年たち、悟くんは母親のもとへと帰り、
気が抜けたような日々を送る私のところに、
一本の電話がかかってきたのです。
…悟くん?悟くんね?どうしてる?元気?
悟くん:…僕ね、学校に、行ってんだ。
おばさんの、話を聞いて、
行きたくなったんだ…。
おばちゃん?…聞こえてる?…おばちゃん…。
森田さん:初めて聞いた悟くんの声。
胸がつまって言葉の出ない私は、
言葉のかわりに、サインを送りました。
S:電話って何だろう?
N:電話は言葉も運びます。
そして、電話は言葉以上のものも運びます。
N+S:もっと、HAPPY TALKを。
NO.5729
広告主 | 日本電信電話 |
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受賞 | 新人賞 |
業種 | 精密機器・産業資材・住宅・不動産 |
媒体 | TVCM |
コピーライター | 松隈剛 |
掲載年度 | 1993年 |
掲載ページ | 375 |