こんにちは、未来くん。
そちらはどうですか。 いつもぼくらのゆくてにあるもの、きみのいるところ。
あのころはまぶしく見上げていた、朝の青空のように。
きみはどこにでもいた、教科書のなかに、校歌のなかに。
図書館の本のなかに、マンガのなかに、アニメのなかに。

二十世紀に生まれ育ったぼくらの、なつかしいともだち。
きみは二十一世紀ともよばれ、希望の名でもよばれた。
きみは宇宙にいた、科学の世紀に、平和の時代にいた。
きみはいつだって、こどもだったぼくらの、憧れだった。

やってきた二十一世紀は、ほんとうにきみだったのか。
信じられない事件、とめられない戦争、世界の痛み。
話がちがう、未来はもっとよくなるはずだったと
いいながら、すでに十年が過ぎてしまった。

わかっている、わるいのはきみじゃない。
ぼくらがなにかをかんちがいしていた、甘くみていた。
すでにおとなになったぼくらには、いいわけはきかない。
未来よ、ぼくらのこどもたちの未来よ。

もういちど、未来をつくろう。
きみは、ぼくらのこどもたちにほかならなかった。
おとなになったぼくらは、もうこどもではない。
未来をつくる現在とは、ぼくら自身にほかならない。

まだ、まにあわないはずはない。
二十一世紀はまだ、はじまったばかりだ。
未来よ、どうぞどこまでもどこまでも、つづいてゆけ。
ぼくらのこどもたちのこどもたちのこどもたちよ。

毎日新聞社は本日、創刊140年を迎えました。
毎日新聞社

NO.84762

広告主 毎日新聞社
業種 マスコミ・出版
媒体 新聞
コピーライター 一倉宏
掲載年度 2012年
掲載ページ 270

一倉宏いちくら ひろし

1982年入会