金鳥小説 夢不来(むしこなーず)
?虫コナーズのCMオーディションに挑む
主婦・近藤幸恵の物語<全十話>?
第二話「腹の虫」 それとなく、それとなく聞いてみよう。
と幸恵は考えていた。あくまでも自然に、
あたかもふと思い出したんだけど風に。
駅前の<ヘルシー自然食バイキングの店>
『紙風船』には、夏子もマリも先に来ていた。
無添加・無農薬が売りで食べ放題・・・ヘルシー
とはどういうことなのか禅問答のような
店である。
「あれ幸恵、また太った?」
夏子の歯に衣着せぬ物言いは子どもの頃
から。慣れている。同じバレー部でこれと
いって活躍できなかった三人は三十数年たった
今もなんだかんだで関係を続けていた。
近況報告、夫の愚痴、昔の話、ドラマの話。
毎度毎度飽きもせず、とどまることのない無駄話。
「幸恵~だからあんた太るのよ」
デザートにカボチャのケーキと生クリーム
たっぷり卵プリンを迷った挙げ句、両方を
持ってきた幸恵に、夏子は容赦ない。
「あのさ、カズちゃんって覚えてる?」
幸恵はプリンをスプーンですくいながら
切り出した。「池田和子!」「昨日テレビに
出てた!」夏子とマリが同時に反応した。
?~地味な暮らしも慣れました~虫コナー
ズ~とご丁寧にハモってくれた二人。
やっぱりそうだったんだ。あのカズちゃん
だったんだ。ただ昨日テレビに出てたと
言うのはコマーシャルのことではなかった。
話題のCMのあの人、というワイドショーの
ことらしかった。結構な特集だったようだ。
「でもすごいよねカズちゃん。オーディシ
ョンで100人くらいから選ばれたって」
ざわざわ。木の役だったカズちゃんが。
「テレビの受け答えも堂に入ってたし」
スキっ歯のカズちゃんが。
「他にも2,3本CMでてるってね」
お姫さま役だったわたしはいま。
「それよりあんた、ちょっとダイエット
しなさいよ」
「ぐえっ」夏子に脇腹をつままれ我に返っ
た幸恵は、自分の紙風船のようなお腹を
じっと見た。
(次回は5月26日掲載予定です)
※ストーリーはフィクションです。
登場人物、団体名等は架空のものです。
KINCHO
虫コナーズ 玄関用
NO.85261
広告主 | 大日本除虫菊 |
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業種 | 化粧品・薬品・サイエンス・日用雑貨 |
媒体 | 新聞 |
コピーライター | 古川雅之 |
掲載年度 | 2013年 |
掲載ページ | 165 |
古川雅之ふるかわ まさゆき
2009年入会