企業広告/イエモトのチャーハン 180秒 立川談春さんの一人語り:
「物乞いじゃあるまいし、
家でゆっくり喰え!」
その声に振り返ると、
イエモトが立っていた。

SE:
(LIVE音声)
えー立川談志めにござりまする。
イエモトというのはぼくの師匠、
立川談志。
ぼく立川談春が、
まだ前座のころの話。
ぼくたち前座は、
イエモトの家に入る前に
毎日集合して、一日一回の食事を
スーパーで済ませてました。
ある者はアンパンを、
またある者はいなり寿司を。
1リットルの牛乳パックを
回し飲みしながら…
あとで聞くと、
イエモトは弟子たちが
あさましく食べている姿が
ショックだったらしいんです。
「あいつら平気な顔してやがるから、
どっかで何か喰ってるのかと
思ったんだ。
じゃなきゃ、
馬鹿だから腹も空かねェのかと
思ったんだが……
そんならそう云うがいいじゃねェか」
云えません…。
弟子にしてもらっただけでも御の字。
喰うや喰わずは当たり前、
芸人になるための修行とは
そういうもんだと。
それが師匠に対する礼儀だと
思ってました。
翌日、
目を見張りました。
イエモトが10人前のチャーハンを
炒めてたんです。
額からダラダラ汗流しながら、
必死で鍋を振ってくれてたっけ。
「とりあえず喰え!」
って差し出されて。
弟子全員で、うつむいて、
無言で食べました。
きれいに平らげ、
「御馳走様でした!」って。
テーブルを見たとたん、
イエモトの顔色が変わった。

SE:
「はぁ? 全部食べたの はあ~」
叫んだんです。
「誰か、隣のスーパー行って、
メシ買ってこい!」
ええ…?
…はっと気づいて。…もう遅かった。
「俺はな、
手前らだけ腹いっぱいにするために
汗かいてチャーハンつくった
わけじゃねェ」

NA:
師匠と弟子、親と子、
人と人を強く結ぶ食事という行為。
つくる人がいて、食べる人がいる。
そして、食べる人がつくる人になる。
食べるということは、
おいしいものを囲んで、
人と人とが向かい合うこと。

SE:
(LIVE音声)
俺ぁやっぱりなんだな。
腹いっぱい喰って死にてェね。
(観客の笑い声 フェードアウト)
そうですよね、イエモト。

SL:
味の素KK(♪~あじのもと)

NO.85857

広告主 味の素
業種 食品・飲料
媒体 ラジオCM
コピーライター 三井明子
掲載年度 2013年
掲載ページ 352