金鳥ロマン小説 ピンクのよろめき
第二話<小俣拓也> スーパーのレジに巨大なこたつぶとんみたいな服着た
おばはんがおるから、顔面見て笑おとおもて、追い抜か
して振り返ったら、息子の同級生の母親やった。びっくり
した。関西弁がでえへんようにするの、苦労したで。
たしか、息子のポン太の授業参観のときにも
「敷布団や」
と思った。それで、思いだしたんや。
嫁はんの広子、つまりポン太の母親が逃げだして以来、
男手ひとつで・・・と言いたいとこやけど、まあ、その間に
何人かの女性の皆様に経済的にお世話になっておりました。
こないだまでおった女が、服やら皿やらなぜかキンチョー
ルまで持って出て行きよったから、スーパーに買いに来た
んやった。
しかし、ポン太にははよう立派に育って、このパパを
扶養してほしいなあ。義務教育、あと何年やったかいな。
長いなあ、九年て。桃でも三年やっちゅうのに。
桃で思い出したけど、最近はキンチョールも桃色になっ
とんのかいな。ほんま、なんでもありやな。女性優先か。
世の中全部女性専用車両か、まあ、おれ以外全員女、て
いう世界もええね。思わず買うた。
せやけど金がない。正味の話。
こないだ、クルマ買い換えるとき、ローン金利が一〇%
いうから借りたんやけど、話よう聞いたら「十日で一〇%
」とかいうんや。どういう計算なんや。
金は天下のまわりもんとはいうけど、ちょっとまわって
くるの待ってられへん感じになってきた。
ポン太の給食費のツケも、そろそろきかんやろうしなあ。
あ、そういえば―ーーあの、おばはん、おれをなんやう
るんだ目で見とったな。
・・・よっしゃ。ちょっと甘えておねだりしちゃおか。
おれってさえてる!てへ!
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アパートへ戻る路上、小俣拓也は蛇のようなピンクの舌
をぺろりと出して笑った。
(次週につづく)