463/浮世話江戸紅 150 N(男):
資生堂浮世話江戸紅

M:
新内流しの三味線

N(男):
赤、という色がまだとても贅沢だった頃、
まるで男もんみたいな地味ィな着物に地味な帯、
でも、そのまっ白な足の爪先に
赤い紅つけてる姐さんたちがいました。
江戸は深川、辰己芸者と呼ばれた姐さんたち。
女を売るのはご法度なんだ、あたしゃ芸一本だよ…って。
でも、やっぱり女なんですねぇ

SE:
女の下駄の音、近づく

N(男):
冬でも足袋をはかない爪先に、
ちゃんと紅つけて化粧して――。

芸者:
ちょいと舟頭さぁん、向島まで行ってくれるかい。

N:
へいっ

SE:
舟、櫓の音

N:
姐さん、辰己の姐さんですかい。

芸者:
へぇ、そんな商売してて芸者の見わけがつくのかい。
兄さん、遊んでんだね。

N:
いえ、その足の爪がね、赤いもんで、そいで…

芸者:
ふん、ヒトの足なんか見て、たいした目ききだよっ!

M:
テーマ曲

N(男):
紅花の紅一匁が金一匁。贅沢な上にはかなくて
雪でも降ろうもんなら、二の字二の字の下駄の跡に
紅の色まで残ってしまう。
紅ってのは少しでもはげると目につくもんで
気ばたらきのない女は、
爪を染めるなんて、
できることじゃありません。

芸者:
女はね、どこかひとつ赤いもんつけると
気持ちがやさしくなるんだって、
阿母さんが言ってたのさ。

N(男):
男みたいな着物着て、男みたいなちゃきちゃきで
でも、その裏っかわには、何かが隠れていたんでしょう。

芸者:
ほら、兄さん雪だよ。手ぇ、冷たくないかい。

SE:
櫓の音、遠ざかる

N(男):
白い素足に赤い紅
赤ってのは 胸にしみる色ですねぇ。
赤をつくる、資生堂。

NO.8998

広告主 資生堂
業種 化粧品・薬品・サイエンス・日用雑貨
媒体 ラジオCM
コピーライター 中山佐知子
掲載年度 1987年
掲載ページ 333