TCC総会トークイベント一般初公開 谷山雅計×福里真一×箭内道彦 「会長、副会長!さあ答えていただきます!」
去る2019年6月28日に行われた「東京コピーライターズクラブ(TCC)」2019年度総会。今年はTCCに久しぶりに新しい会長が誕生。12年つとめた仲畑貴志さんから谷山雅計さんへとバトンタッチされました。それを記念して、谷山新会長とふたりの新しい副会長も登場してトークイベントが開催されました。それも、ただ3人が話すのではなく、各界の著名人から「質問動画」をいただき、それに応える形式です。これからのコピーとは?広告とは?TCCとは?次々と襲い掛かる鋭い質問に対する3人の答えは。
※6月28日のトークイベントをダイジェストで掲載しています。
【登壇者】(写真左から)司会:佐倉康彦、TCC副会長:福里真一、TCC会長:谷山雅計、TCC副会長:箭内道彦
佐倉康彦(以下、佐倉)
きょう、いろいろとTCCともゆかりのある方も含めて、幾つかの質問動画が来てるんですね。その質問に対して、この3人にしゃべってもらおうかなと思ってます。箭内副会長は、きょう問題発言をしまくって、きょうで辞めるって言ってるので。
箭内道彦(以下、箭内)
辞めるっていうか、辞めろって言われると思います、多分。
佐倉
最初に動画を見ていただいて僕が適当に皆さんに振ります。適当じゃない、的確に振りますんで。では、さっそく始めたいと思います。
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コピーライターに質問 その1【電通/VTuber:菅野薫さん】
※菅野さんは、VTuberとしてご自分で作成したCGキャラクターに合わせて話しています。
菅野
東京コピーライターズクラブの皆さま、初めまして。電通に勤めております、菅野薫です。谷山さん会長就任、福里さん、箭内さん副会長就任おめでとうございます。僕はTCC会員じゃないので、どういう仕事をされてるのか全く想像つかないですが、大変そうですね。お疲れさまです。僕はTCCに自分から応募したこともないですし、これまであんまり縁がなかったんですけれども、こんな形で声を掛けていただいて本当にうれしいです。ありがとうございます。
(途中で声と動きを確認)
では、僕から質問です。このところ、広告の制作の仕事をしていると、CMとかグラフィックとかの仕事と同じくらいデジタルメディアだったりとか、ソーシャルメディアに関係する仕事もありますし、さらに言うと、テクノロジーを使ったような仕事だったりとか、ライブイベントの仕事だったりとか、さまざまな仕事があります。そうやって広告クリエーティブの仕事の幅や可能性が広がってるってことは、すごく素晴らしいなと思う一方で、広告のプロとして必要とされる技術の幅っていうのもすごく広がっていってる気がして、難しい時代だなということも感じてます。
テクノロジーによってメディアが進化すると、そこでやりとりされる言葉も違うなというふうな実感もあって。例えば、技術的に言うとほぼ同じ構造のものなんですけれども、電子メールだったらお手紙の作法がまだ残ってて、「谷山さま、お世話になっております。ご確認どうぞよろしくお願いします。署名。」みたいな感じになりますし。携帯のショートメッセージでは絵文字が入ってきて、わちゃわちゃして大騒ぎになりますし、FacebookのMessengerだとこんな感じになりますし、LINEだとスタンプで、もう余計なあいさつ抜きで会話し始めちゃったりもしますし。僕みたいなVtuberは、顔とかしゃべり方が全然かみ合ってなかったりとかってことまで起こります。(話している間に、キャラが色々と変わる)
こうやってどんどん新しいメディアが発明されて、日々コミュニケーションに使うプラットフォームがどんどん日々更新されていくっていう時代に、メディアに載せる言葉の専門家の集団であるTCCの皆さまは、言葉の技術をどう評価して、どう育てていこうと思ってるのか知りたいです。よろしくお願いします。菅野薫でした。
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佐倉
意外と。重たいテーマなんですけれども。まずこれやっぱり新会長の谷山さんかな。
谷山雅計(以下、谷山)
質問に答える前に言いますと、要は今の若い制作者はコピーライターになるよりも、菅野くんになりたいんだと思うんですよ。TCCの新人賞の応募が最近すこし減ってきてますっていう話があって、第1の原因は彼かもしれませんね。でも、すごい人です。この前、秋山晶さんと話して、ちょっと菅野君の話になったら「彼は世界的な才能だね」って、盛り上がってました。でも質問に関しては重かったですね。
佐倉
プラットフォームがすごい変わるじゃないですか。
谷山
いろいろあるじゃないですか。ただ思ったのは、言葉をどう育てていくかっていう質問がすごく気になって。ていうのは、言葉をどう育てていくかなんて、これまで一度も考えたことなかったなって思ったんですよ。ていうのはね、そうじゃないですか。要するに僕らの仕事って、基本的には商品をどう育てていくかとか、ブランドをどう育てていくかっていうこと考えて、そのときに言葉っていうのを道具として使ってるから。言葉が目的化してんじゃなくて、言葉はやっぱり手段としてずっと考えてたから、言葉を育てていくっていう気持ちじゃなかったな。もちろん人を育てるような気持ちはそれなりにあると思うんですけど。だから……
福里真一(以下、福里)
言葉をどう育てるかというよりも、言葉の技術をどう育てるか、という質問のようですけどね。
佐倉
あとはその手前にある、言葉の技術をどう評価するんすか、新会長。ていうところが意外とポイントかな。
谷山
どう評価は、だって広告だから1つの評価方法なんかないわけであって、こういうやり口もあるよね、こういうやり口もあるよねっていうとこの、結局のところそういう多様性をどれだけ考えて提示してるか、だから。
福里
結局、道具としての言葉がどう有効に使われているかを、その都度評価していくしかないわけですよね。最近ではTCCも、SHARPのTwitterの中の人とかを新人賞に選んだりしてましたよね。
佐倉
次は僕も大好きな映画監督の西川美和さんです。
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コピーライターに質問 その2【映画監督/作家:西川美和さん】
西川
映画監督の西川美和です。
私は広告のコピーとかプランニングっていうのをほとんどしたことがないというか、1回もしたことがないので、ちょっと私が質問するのも僭越なんですけれども。絶対に使わないようにしている言葉があったり、言い回し、もしくは絶対にやらない手法というのがおのおのにお有りになれば教えてください。
また、広告を作る人たちにとって、本当に欲しいとか、本当に憧れる賞になっていくにはどんな工夫が必要だと思われますか。
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佐倉
TCC賞をもっと憧れる賞にするにはどんな工夫が必要かっていうことで言うと、トリックスターの箭内辺りからちょっと振ってみたいなと思ってんですけど、どうでしょう。
箭内
いやいや、トリックスターじゃないんです。僕、本当に総会はもちろん出たことないですし、同期の会の名前も知らないです。で、TCCに応募もしないって基本決めていて。
谷山
昔はしてたでしょ。
箭内
昔はしてました。昔してました。
福里
樹木希林さんの富士フイルムで受賞もしてますよね。
箭内
そうそう。あれは取りたかったんだよ。あれ1個だけ、あの時。希林さんと一緒に、連名で。
福里
「写真は家族の形を整える」っていう名コピーで。
箭内
そうそう。そういじめないでくださいよ。
谷山
その前に新人賞取ってるじゃん。だから、会員になってるし。
箭内
いや、否定してるわけじゃないです、会長。僕は谷山派ではないです。谷山さんの指名を受けましたけど、谷山派ではなく。やっぱりTCCってどうなんだろうって、会費を払ってる外側からずっと見てて、格好悪いなって思うこともたくさんあって。で、谷山さんに急に電話でこのことを頼まれてというか、「やって」みたいな感じだったんで。何ていうんですかね、自分がそういうコピーライターでもない、会費を払ってるだけの、何かTCCって気持ち悪いとこあるなって外側からずっと思ってた人間が、何かできることが1つ、2つあるならそれをやってクビになろうって思って、これを僕は引き受けました。憧れる賞にするには、僕のもちろん私見ですけど、いいものを受賞させることを増やそうってし過ぎたような僕は気がしてます、TCC。
谷山
そうですか。
福里
なるほど。
箭内
それによってCMプランナーたちが流入してきた。僕はやっぱ、コピーライターのクラブであるべきだと思います。だから、たとえばCMプランナーには会員資格をご返納いただくとか。僕も辞めなければならなくなりますが。(会場から笑)
福里
なるほど。
箭内
で、ほんとに……
谷山
取りあえずこの場のうけで言ってない?
箭内
いや、言ってない。審査員を辞退したのもそうですが、やっぱりCMとコピーが、コピーライターズクラブっていう名前に同居してることにずっと違和感を感じていたんです。
福里
どの人がコピーライターで、どの人がCMプランナーかっていうのは?
箭内
よく分かんない。分かんないけど。
福里
箭内さんが全部決めてくれないと。
箭内
知らない、知らない。知らないっす。もう帰りたいです、僕。本当に。こんなにアウェーなとこに何でこの歳で来なきゃいけなかったかって。
谷山
でもこの人、実は数年前から「何年か審査員を断ってたら、みんな投票してくれなくなっちゃった。そろそろ戻りたい」って言ってたんですよ。
箭内
いや、だってほら。
谷山
言ってたじゃないか。
箭内
いろんな人と会えるし。すごくいい場所だけど、もう当選しないっていう。あれは、何人かのCMプランナーやCDと話して、揃って辞めたんです。
福里
でも、憧れる賞にするにはっていうのは?
箭内
そこ何なんだろうっていうね。
福里
まあ全部CMプランナー辞めさせるっていうのがいいかどうかは別として……
箭内
それは確かにちょっとうけ狙いもあったかもしんない。ごめんなさい。
福里
別として、あれですか。もうちょっとコピーというものを突き詰めた賞になったほうがいいっていうご意見なんですか?
箭内
クリエーティブディレクターって言うより、コピーライターって言ったほうが、「あ、そうか」って言われるっていう話が出てて、すごいすてきなことだなと思ったし。コピーライターって格好いいなって思って。
福里
でも、箭内さんが、そういう意見なのは意外ですね。意外と。
箭内
意外ですか。
福里
意外と意外ですね。コピーなんかに限定しないで、もっと広く広告を捉えるべきだ、みたいな意見のこともあり得るじゃないですか。
箭内
でも、僕やっぱりTCCっていうのは一部だと思うんですよ。広告全体ではない。
福里
そうですね。私も、それはすごくそう思います。
箭内
広告界全体がこれからの広告がどうあるべきかを本当に考えなきゃいけないときで。TCCの中で審査どうするか。何て言っとけば炎上しないかなみたいな、そういうときじゃないんですよ、今。だから、もっとADCやACCや電通や媒体とも、ちゃんとこれからの広告がどうあるべきかを話さなきゃならないタイミングじゃないかなと。
谷山
会長になる?
箭内
いや、ならないです。ならないです。外側でやります。
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コピーライターに質問 その3【女優/歌手:大原櫻子さん】
大原
東京コピーライターズクラブの皆さん、こんにちは。大原櫻子です。私コピーライターというか、キャッチコピーですごく日常で印象に残ってるのが、セブンイレブンの「さて!カフェラテ」っていう広告が一番印象に残っております。何て言うんでしょうね。理由は本当に分からないんですけど、目に入ったときに「わ、何かすごいうまいな」っていう。「さて!カフェラテ」、なんか飲みたいなって、その広告を見ただけでぐっと心をつかまれて、すごく不思議だなって感じております。
そんな皆さんへ質問なんですけれども、私も実際音楽活動とかさせていただいてて、タイトルとかを考えるんですけど、それこそ世の中の人に分かりやすい言葉だったりとか、あとは聞いたことのない、見たことのない造語がないかとか、いろいろ探っていて。その中で1人でも多くのお客さんの目に留まるような、心をつかめるようなキャッチフレーズというか、タイトルを毎回考えてるんですが。何か今私が言った以外にも、皆さんの考えてる人の心をつかむコツっていうのは何かあるんでしょうか。ぜひ教えてください。
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福里
この質問の前半部分が、けっこう大事なところだと思うんですけど、やっぱりTCCって審査のときに、結構難しいところありますよね。機能するコピーと受賞するコピーの微妙なズレというか。「さて!カフェラテ」は確かにカウンターの所にあるとすごく効きそうだなって思うんですけど、でも審査でずらっと並んでいる中で見ると何か……
谷山
ちょっとなかなか入らないかもなってありますよね。
福里
あっちのほうが上に行くでしょ、やっぱり。「お金なんていう不思議なものを持ってるもんだな」みたいなやつのほうが。
谷山
一応グランプリですからね。
福里
グランプリ行くわけで。そこの基準っていうのは結構難しいところありますよね。
谷山
そうですね。僕もこの質問を聞いて、言われてみれば「さて!カフェラテ」は自分の心にも残ってるなって思って。確かにあれ結構機能してる言葉だな。やっぱああいうものもちゃんと評価できるようなTCCであってほしいなって。
福里
そこはどうですか。でも……
谷山
そこは思いました。
福里
「さて!カフェラテ」が谷山新会長時代にはTCC賞に入るっていう可能性はどうなんですか。
谷山
現状の、今の審査員の傾向からするとものすごく低そうな気はします。
佐倉
じゃあ、次に『ガキ使』のディレクターのヘイポーさんから来てます。
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コピーライターに質問 その4【テレビディレクター:斉藤敏豪さん】
斉藤
どうもヘイポーです。今、『ガキの使い』の楽屋でまだ誰も来てませんコピーライターさんというと僕らもすごい興味あるんですけども。皆さんすごい何か面白いフレーズとか言葉を考えるんですけど、何か素人みたいなこと言ってすみませんけど、どういう発想で、デスクで一生懸命考えるのか、遊びながら偶然のように生まれてくるのか。そういうところを聞いてみたいけど、皆さんはどうやって考えてるんですか。
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佐倉
これ福里副会長、箭内副会長、谷山会長、それぞれにちょっと答えていただけるとうれしいですね。
谷山
だから、コピーは一言だけど、どうやって考えるかって聞かれたら一言で答えられないのがコピーですよねっていう感じですよね。どうやって考えるかって言われたら、説明するのに10時間ぐらいかかっちゃう。
佐倉
かかりますね。
谷山
すみません。
佐倉
ものによっても変わりますもんね。
福里
じゃあ、ちなみに箭内さんはコピーって、コピーを考えようっていうときってあったんですか、今まで。
箭内
いや、ないですね。
谷山
割と人に書かせてますよね。
箭内
ないですし、自分で書いてもそれコピーっていうレベルじゃない、正直。
谷山
でも「NO MUSIC, NO LIFE.」とか選んだわけでしょ。チョイス素晴らしいよ。
箭内
いえいえ。
福里
それってちなみに、選ぶ前にご自分では1回書いてみてるんですか?
箭内
書いてみてないです。
佐倉
次はミュージシャンから来てます。CMソングの関係性とかの話です。
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コピーライターに質問 その5【いきものがかりリーダー/ソングライター:水野良樹さん】
水野
東京コピーライターズクラブの皆さん、どうも。いきものがかりの水野良樹です。質問を2つしたいと思います。1つは、僕、歌を作ることをなりわいにしてるんですが、何度もCMソングという形で広告にはお世話になりました。コピーライターの皆さん、CMプランナーの皆さんから見て、いいCMソングとはどういうものなんでしょうか。それについては、一度伺ってみたいななんてふうに思っていました。
あと、もうひとつはやっぱり僕ら音楽の世界、他の方を評価し合ったりとか、リスペクトを伝え合ったりっていうことがなかなか難しくて。アワードをつくるのも大変だったり、どうしても評価する仕組みっていうのがうまくつくれないんですけども。コピーライターの皆さんはやっぱりこういう組織があって、結構けんけんがくがくとしゃべってらっしゃって。どういうふうに評価のシステムをつくっていけばいいのか、皆さんに伺いたいな、なんていうふうに思っております。以上、いきものがかりの水野良樹でした。また。
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佐倉
これ、なかなかいろいろ示唆に富んでいる質問なんで。まずは、いいCMソング。多分、CMソングって歌詞もあるし、そこにメロディーが乗っかってきて、リズムがあってっていうことで言うと、それこそ「NO MUSIC, NO LIFE.」だったらどう考えるのかなと。
箭内
それも谷山さん的に言うと、もうそれぞれ、さまざま課題に対してだと思うんですけど、僕が好きな話は昔、資生堂でラッツ&スターが「め組のひと」っていうのをやった時に。
谷山
小野田さんじゃないですか?
箭内
そうです。15秒の中に2回、7秒の手前と14秒の手前に「め」が入るっていう発注をしたらしく。
谷山
それはすごい発注ですよ。素晴らしいですね。
箭内
それが、当時のああいうトップアーティストの方がそこに挑んでいったって。そういうのはすごくいい話だなと思います。
谷山
きょう、ぼく、箭内君から初めて役に立つ話を聞いた。
箭内
すみません(笑)
谷山
でも初めてってのはうそだけど。これ聞いたときに、われわれ的にはあんまり、CMソングっていうよりサウンドロゴ的に考えることが多いじゃないですか。サウンドロゴとCMソングってだいぶ違うから、そこら辺で、おそらく水野さんがおっしゃってるのはCMソングのほうだろうから、そこら辺分からないなと思ったけど。今、言ってた「め組のひと」は2回こことここに「め」を入れるとかっていうのはCMソングのようで、ものすごくサウンドロゴ的な考え方でされてるから。
箭内
そうでしょうね。
福里
音楽に限らず、作り手ってそのぐらい具体的なこと言ってあげたほうが、作りやすいのかもしれないですね。
谷山
素晴らしいなと思って。
佐倉
結構思いっきり縛られてるようでかなり自由っていう。
箭内
そうそう。
佐倉
「め」を2回、言やいいっていうことになってくるんで。
谷山
ちなみにいきものがかりの水野さんが割とそういう、制約とか好きな方だって聞きましたけど。
福里
そうかもしれませんね。でも、すみません、私、1個目より2個目の質問について……
谷山
答えたかったんですか?
福里
答えたいですけど。私、この話はすごく大事な話だなと思って。というのは、今の話、音楽業界には音楽を実際にやってる人たちで相互に評価する賞みたいなものがないって。
谷山
ないと。
福里
いうような話をしていて。で、広告業界にはそれがあって、前に一度お会いしたときも、その話をされてたんですけど、それをうらやましく思ってるんですね、水野さんは。だからTCCって、ともすると、そういう「身内の褒め合いじゃないか」とか、「作り手が作り手を褒めてるっていうのは内輪だ」っていうふうに批判されがちなんですけど。それが今すでに存在してるから、そうじゃないほうが素晴らしいっていう視点がありますけど、そういうものがあること自体は音楽界の人から見るとうらやましいっていう部分もあって。きょう、まさにあれを見たわけですよ。私、朝新聞を見たら、オールスター戦って「選手間投票」っていう……
谷山
あります。
福里
ものがあるんですね。あれ、やっぱりプロ野球選手って当然プロだから、ファンに選ばれるっていうことがまず一番うれしいっていうのは当然なんですけど。それとは別の尺度で選手間で投票してオールスターに選ばれるっていうのも、それはそれでうれしいんじゃないかなっていう。まず、自分だったらうれしいだろうなっていうふうに思いましたし。しかも、TCCっていうのは選手間投票どころか、要は王、長嶋から大谷までの審査員たちが審査してるとも言えて……
谷山
まあ大谷は違うけどね。まあいいや。
福里
大谷は違う? いやいや、だから何か、ともすると「身内で褒め合うTCCは駄目だ」みたいに言うけど、広告界に色々な賞がある中に、そういう賞があること自体は、私はいいんじゃないかなっていうふうに思ったっていう、そういうことですね。
谷山
本当、副会長に指名して良かったなって。
佐倉
じゃあ次です。次は意外と重たいです。
谷山
また重たいんですか。
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コピーライターに質問 その6【アートディレクター:副田高行さん】
副田
アートディレクターの副田です。TCCの組織が新しくなり、TCCに対しての質問ということですが、うーん、これが結構難しい。
そういえば、仲畑さんの辞退の言葉が笑っちゃいました。「このまま会長を続けるといけないことをしそうなので辞退します」というのが、仲畑さんらしくて笑っちゃいました。さて、谷山さんこれからもTCCをよろしくお願いします。
かつて、1980年代にコピーの時代というのはありました。仲畑さんや糸井さんら、若いコピーライターがそれまでの広告を一新させました。数々の名作コピーが生まれました。「好きだからあげる」、「おいしい生活」などなど。ちょうどその頃、私は仲畑さんと幸運にも出会いました。その新しいコピーと出会い、私のアートディレクターとしての考え方が一変しました。そもそも広告はコミュニケーションであると。そして今、広告に元気がないといわれています(特にグラフィック広告)。近年のTCC賞グランプリを見ても、テレビCMやウェブCMが受賞しています。
かつて広告は「コピーは骨格、アートは肉体」といわれていました。骨格(コピー)のしっかりしたものでなければいい広告は作れません。時代が変わっても、広告の本質は変わらないと思います。もう一度元気な広告を作ってほしい、元気なコピーを書いてほしいのです。よろしくお願いします。
TCCへの質問というのが、何だかお願いのようなものになってしまい、すいません。そこで、質問です。コピー(広告)はこれからどこへ向かうのか、です。よろしくお願いします。コピーをこよなく愛す、アートディレクター副田でした。
デザインはまあまあうまいです。ありがとうございました。
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佐倉
谷山さん。どうします。
谷山
いや、素晴らしいですよね。ていうか、棒読みもちゃんと演出ですよね。
佐倉
しかも副田さん、今、全く目が笑ってないわけですよ。そういうことも含めて、新会長の谷山さんとしてはコピーって、広告ってこれからどこへ向かうのかなって所見がいただければ。
谷山
ものすごく真面目なこと言いますけれど、副田さんはやっぱり広告っていうのはコピーっていう骨格があってって、骨格、コアだと思うんですけど。それは僕もずっと昔からそう思ってたんですよ。でも、一方で僕思うのは、今の時代には、昔はやっぱりわれわれって、広告って、言葉で集約して、削って削って集約するコピーで真ん中にっていう仕事をしてたんだけど、やっぱり最近、それはウェブとかも含めて、媒体の特性もあれなんだけど。別に集約しなくても、だらだらだらと拡散したもので伝えるっていう方法もやっぱりあるわけじゃないですか。
佐倉
さっきの冒頭の菅野君の質問が近いと思いますよ。
谷山
だから、僕、一方でやっぱりそこの動きで、だらだらだらと拡散してるやつのことを「お前らには集約力がない」と言ってるだけでは意味がないと思ってて。僕は全然、おそらくきっと、一方で集約する力の持ち主と、一方で拡散する力の、拡散っていうか、だらだらだらっと伝える力の持ち主がどうせめぎ合って、その中で新しい広告とか言葉とかコピーとか生まれてくるのかなっていうふうに思っております。
佐倉
なるほど。
箭内
「僕はコピーライターじゃないから」ばっかり言ってると、谷山さんと同じで逃げになっちゃうけど。
谷山
何で俺が逃げなんだよ(笑)。
箭内
すごく言葉を待ってる時代だと思いますよ、今。みんながこれだけ言葉に触れた時代ってないし、日本全国。短い言葉で自分の人生変えてほしいとか、励ましてほしいとか。本気で思ってると思う、みんな。
谷山
でも俺思うのは、みんな名言好きだと思う。名言好きで、すっごい名言聞きたいんだけど、名言聞いた人って大抵、名言聞いて「ありがとう」って終わって。
箭内
いやいや、会長それはね。
谷山
ちょっと待って、最後まで聞き……
箭内
ごめんなさい。
谷山
名言聞いて「ありがとう」って終わって、大体それを言ったブランドとか商品のこと、ぱーんて忘れる人がほとんどだから、そこどういうふうにつなげ……。
箭内
会長駄目だ。
谷山
なきゃいけないのかなと俺は思うよ。
箭内
会長やっぱり現状の分析しかしてないですよ。副田さんはこれからどこに向かうのかって言ってるんですよ。
谷山
そうか。
箭内
現状に対応し過ぎてますよ、あなた。
谷山
だって俺、今のことしか分からんもん。
箭内
いやいや。理想を持って、コピーライターがどう逆襲していくかってことを、それ考えなかったらあんた会長失格だ。
谷山
すみません(笑)
福里
それで、どうすればいいんでしたっけ。
谷山
どうすればいいの。
福里
どうすればいい?
箭内
そこまでは俺、まだ担えない。すみません。
佐倉
意外といいことしか言ってなかったのが気になるけど、まあいっか。じゃあ、最後です。最後にもうひと方質問がありますんで、お願いします。
谷山
いやあ、いじめられてるな。
箭内
いじめてないって(笑)
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コピーライターに質問 その7【歌手/俳優/演出家:夏木マリさん】
夏木
東京コピーライターズクラブ、シフトチェンジおめでとうございます。夏木マリです。さて、きょうはおめでたいお3人に質問です。コピーライターの三種の神器ってどんなのかなと思って。もちろんクライアントワークあってのことだと思うんですけども。トップを走るお3人に伺ってみたいなと思いました。
それで、ここから無茶振りなんですが、例えば、男性のベテランの方と若い女性っていうカップリングが多いと思うんだけど、矢沢さんと若い女性とか、泉谷と若い女性とか。例えば私みたいなキャリアの女性と若い男性のカップリングで何かクライアントからオーダーがあったとして、マーケティング戦略に乗るようなコピーを今ここで考えてくださいっていう無茶振りはいかがでしょうか。よろしくお願いします。
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谷山
無茶振りだなあ。
佐倉
三種の神器、それぞれ多分、福里副会長、箭内副会長、谷山会長それぞれ違うと思うんで。
谷山
三種の神器って何?
佐倉
それも知りたいなと思いつつ、どっちかっていうと後半ですね。夏木マリと若い男性のカップリングの広告のコピーをこの場で作ってください。大喜利みたいですけど。これ3人にちゃんと答えていただきたいなと。
箭内
僕最初に、僕考えないようにしたいんですけど。『大貫卓也全仕事』大好きでね。ペンギンが表紙のやつ。あれの後ろにボツ案集っていうラフがあって。
佐倉
あった、あった。
箭内
豊島園の夏のプールで「夏決まり。」っていうのがあった。
谷山
「夏決まり。」ってあった、あった。
箭内
今こそ、あれ形にしたらいいんじゃない。「イッセイ・ヒヤケと夏決まり。」。
佐倉
なるほど。結構きれいだね。
谷山
カップリングって何? マッチング……じゃあパートナーエージェントでほら、「ドロンジョより夏木マリだろう」ってほうでいいんじゃないの。
佐倉
なるほど。
谷山
あれ? うけなかった。
箭内
大丈夫ですよ。自信持って谷山さん。大丈夫。(会場から笑い)
佐倉
福里副会長は?
福里
何か言うんですか。
佐倉
何か言ってください。
福里
はい。この惑星の……(会場爆笑)
谷山
また、全部それで済まそうとしてんだろう。
福里
「この惑星の夏木マリは、若い男と一緒にいても、決して母親や祖母には見えない」っていうのはどうですか。
谷山
いいよね、もうそのパターンがあるとね。
箭内
それをほんとに実現したらいいと思う。BOSSで。
福里
うん?
箭内
実現されるんだっていう。
福里
ていうか、最後すごい無茶振りで終わりましたね。
佐倉
谷山さんと福里さんと、箭内さんのそれぞれの意見を聞いていると、本当にドラスティックにTCCが変わっていく潮目なのかなと思っていて。それも含めちょっと谷山さんから何か一言あって、終わりにしたいと思います。
谷山
急に真面目にあれするんだね。本当にお騒がせしましたと言いますか、秋山さんからあんまり内にこもってなくて、やっぱり外の人たちと接して、外向けにTCCが何なのかを発信してくれよっていうようなことで、何かやろうとやった割には全くそういうことにはなってなかった。多少でも楽しんでもらえればそれで良かったのかなと思ってます。ほんとにこういうものに付き合っていただきまして、ありがとうございました。これからもTCCよろしくお願いします。てことでいいですか。
佐倉
どうもありがとうございます。
<パネラー&司会者プロフィール>
谷山雅計
コピーライター。1961年大阪生まれ。博報堂を経て(有)谷山広告。
主な仕事に、新潮文庫「Yonda?」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、資生堂「TSUBAKI」東洋水産「マルちゃん正麺」、(著作)広告コピーってこう書くんだ !読本など
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福里真一
CMプランナー・コピーライター。1968年鎌倉生まれ。ワンスカイ所属。
いままでに 1500 本以上のテレビ CMを企画・制作している。主な仕事に、ジョージア「明日があるさ」、トヨタ自動車「こども店長」、BOSS「宇宙人ジョーンズ」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。
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箭内道彦
クリエイティブディレクター。1964年福島県生まれ。「月刊 風とロック」発行人。渋谷のラジオ理事長。東京藝術大学学長特別補佐・美術学部デザイン科教授。2011 年の NHK紅白歌合戦に出場した猪苗代湖ズのギタリストでもある。
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佐倉康彦
クリエイティブディレクター。1963年足利生まれ。サン・アド、博報堂を経ナカハタ設立に参加。主な仕事にリクルート「卒業って、出会いだ。」、サントリー「愛だろ、愛っ。」、イザック「大好きというのは、差別かもしれない。」など。近作に映画「男はつらいよ・お帰り寅さん」のコピーワークなど。
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お知らせ
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今年のコピー年鑑は、TCC新会長、副会長への3万字インタビューも掲載。総会のトークライブとはまた違った話が楽しめます。さらにファイナリスト以上の制作者によるコメントや最終審査委員の解説も掲載!平成を締めくくる1冊。ぜひお買い求めください。