《書籍紹介》洋画プログラムに夢中だった頃 1955-1988秘蔵コレクション大公開/新井巌 著
『洋画プログラムに夢中だった頃
1955-1988秘蔵コレクション大公開』
新井巌 著
出版社:言視舎
発行日:2020年8月31日
定価:2,200円(税込)
映画少年だったすべてのコピーライターへ。
みんな映画少年だった。なかでもコピーライターは、みんな映画少年だったと僕は思っている。思い込んでいる。なぜって、僕自身がまるっきりそうだったから。
高校が新宿だったものだから、新宿名画座が僕の第二の学校となった。フランス名画週間なんていうのもあって。ある日授業をサボって見入っていたら後ろから「校帽とれ」と声をかけられた。振り返ると美術の先生だった。年に200本以上映画を見るという僕の青春が、そのあたりから始まった。
新井巌さんは、僕と違ってロードショー映画館育ちだ。有楽町、丸の内、銀座、日比谷界隈の映画館の出身である。新井さんの映画学校の進学記録ともいうべき洋画プログラム。その膨大なコレクションをめくりながら、戦後洋画の歩みを語り尽くしたのが本書「洋画プログラムに夢中だった頃」だ。1955−1988秘蔵コレクション大公開、とサブタイトルにある。
かつては、映画を見たあとパンフレットを買って、その映画のさまざまな情報を反芻することは、映画を見ることの一部だった。映画青少年の必須アイテムだった。GOOGLEがなかったからね。そんな時代に集め続けたコレクションをめくりながら、新井さんはいま映画の歩みを紐解いていく。
例えば、脚本家ダルトン・トランボのヒストリーを、新井さんはプログラムの中から読み解いていく。赤狩りで追放されたトランボが様々な偽名で書いた「ローマの休日」「黒い牡牛」「ガンヒルの決闘」。ようやく復活して本名トランポの名前で書いたキューブリック監督の「スパルタカス」。自らメガホンをとった「ジョニーは戦場に行った」。最後の作品となる「ダラスの熱い日」……。こんな、わくわくする物語が紡がれていく。
ルルーシュの「男と女」2部作の20年ヒストリー。「愛と悲しみのボレロ」に登場する音楽家たち、ラベル、カラヤン、グレン・ミラー、ピアフ、ヌレエフ、ジョルジュ・ドン、ベジャールらのエピソード……次つぎと、映画プログラムから読み解かれていく。
こんな音楽に関しての読み解きが特段に楽しい。「日めくりオペラ366日事典」の著書がある新井さんの真骨頂。音楽ライターならではの蘊蓄に出逢えて、興奮する。
ページをめくる指が止まらない。
(TCC会員 岩永嘉弘)
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■著者コメント
岩永さん、身にあまるご感想をいただきまして、ありがとうございます。時折、オペラの会場でもお会いしますね。
映画に関しては、TCCではすでに1988年に「コピーライターズ・シネマ倶楽部」編として「映画は人生のお友だち~洋画編~」という大型本が出版されており、その本も拝見しました。朝倉勇さんをはじめとする執筆者それぞれに思い入れのある映画論を繰り広げていらっしゃいます。
その中では岩永さんもお書きになっていますが、そんな先達たちの論稿に比べると、私の本はずっと軽いものですが、知っている映画、知らない映画も含めて、映画全盛時代だった昭和の思い出のよすがとして、ページをめくっていただければ幸いです。
(新井巌)
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