リレーコラムについて

将棋

関俊洋

小さい頃から将棋が好きだった。

強くはなく、むしろ弱いが見るのが好きで、

ここ10年くらいほぼ毎日対局のハイライトをYouTubeで見ている。

 

そんな将棋は、AIが入り込んできたタイミングが最も早いコンテンツの1つだと思っている。

転機は2012年に行われた人間vs AIの非公式棋戦、通称「電脳戦」。

 

将棋を学ばせたAIはとてつもなく強かった。

悪い手を指せば、戦況は確実に悪くなっていくのが将棋。

運や偶然の要素はない。AIはミスをしない。一手でもミスをすれば負ける戦い。

当時の名人でさえ全く歯が立たなかった。

 

何よりも衝撃的だったのは、定石を無視した指し手の連発で、

棋士たちが「えぇ?」となる場面が多かったことだ。

今まで人間が培ってきたものを根底から破壊してくる様は、

見ていてあまりいい気分のするものではなかった。

その残酷さゆえか、電脳戦は6年で終了した。

 

そこから、AIは人間の対戦相手としてではなく、

評価値(形勢判断)の割り出しや、最善手の割り出し、

棋士たちの棋力向上のための勉強ツールなど、

人間が将棋を強くなるため、

観戦をより楽しみやすくすることに役立ちはじめた。

 

将棋はAIの洗礼を浴びた。

でもおもしろいことも起こった。

古いと思われていた戦法が、AIによって蘇ったのだ。

 

雁木(がんぎ)。

 

江戸時代からあるこの戦法は、似形の「矢倉」の優秀性に押され、

プロ間でほとんど指されることがなかった、いわば「B級戦法」的格付けの戦法だった。

 

が、AIが指したことによってその優秀性を再評価され、

2016年に流行戦法として現代に蘇ったのだ。

藤井聡太竜王名人もタイトル戦で雁木戦法を採用していた。

 

新しい技術の出現による「破壊」と「創造」は常だが、

個人的には「再生」が一番嬉しい気持ちになる。

 

かかる時間と労力に見合わず誰も掘らなかった鉱脈を、

試しにAIに掘らせてみる。すると金脈が見つかったりする。

 

そう思うと、これまでの全てのものにチャンスがあるとも言える。

なんかちょっと明るい気分になれる。なんてことを思った話。

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5882 2025.04.10 将棋
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5882 2025.04.10 関俊洋 将棋
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5880 2025.03.31 福岡万里子 アツアツドミニカ
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