「ひと言」にひと言⑤
名古屋で働いていなかったら、
こんなに新幹線に乗る人生にはなっていなかったと思う。
10日連続で乗ったこともある。もう運び屋である。
そんな新幹線での「ひと言」といえば「倒してもいいでしょうか?」だ。
自分がリクライニングを倒す際に、
後ろの席の人に「倒してもいいでしょうか?」と言うアレである。
もちろん必ず言わなければならないかというと新幹線の場合はけっこう曖昧だ。
みんな多少は倒すし、また倒してもそこまで不快にはならないスペースがそこにはある。
定期的に議論にもなっているようで、
とあるアンケートでは75%は声をかけるべき派、25%はかけない派だそうだ。
いろんなご意見があるとは思うが、私はなるべく言うようにしている。
先日も体をひねって「倒してもいいでしょうか?」と言ったのだが、
そのときふいにこんなことを思った。
もし理由なく「ダメです」と言われたらどうしようかと。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
返す言葉があるだろうか。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「え」
これがリアルだとは思うが、
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「ちょっと、ちょっとだけですよ」
言う自信はない。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「そこをなんとかお願いしますよぉ」
卑屈すぎてそのあと駅弁食べながら泣く。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「あなたは倒してないんですか?」
もしその人が倒していなかったら終わり。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「からの~w」
言えるくらい強い人間になりたい。
「倒してもいいでしょうか?」
「いや、ダメです」
「ダメかあ・・・」
反芻。反芻。反芻。
何が言いたいかというと、
「断固たる否定」にはなかなか勝てないということだ。
仕事をしていてもたまに出くわす、この「断固たる否定」。
言い換えれば強い意志。断られるわけがないと思って聞いているこちら側を見透かす意志。
言われたら困るものの、実はちょっと憧れている。
さらに何が言いたいかというと、
「再来週のリレーコラムお願いしますよ」
と私が言ったときその人は「いや、ダメです」
とは言わなかったものの、ちょっと困った顔をした。
「再来週かあ・・・」
来週はただただ反芻した尾崎敬久さんです。
はたして書いてくれるんでしょうか。
ザキさん、よろしくお願いします。
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