リレーコラムについて

いいんですか、やなせ先生

中川英明

ボクの息子と娘は、兄妹で顔がよく似ているが、

食べ物の好みもよく似ている。

 

もっと正確に言うと、

好き嫌いが激しいところがよく似ている。

 

息子は、出された食事のアレが気に入らないコレが気に入らないと、

まるで海原雄山ばりにダメ出ししては、すぐにオカズを突き返してくる。

 

娘は、まだお兄ちゃんほど上手に話せないので、ただ

「ちあう(違う)ー!」と叫んで、やはりオカズを突き返してくる。

 

そしてボクは、2人が口をつけなかったオカズを全部食べ、

この1年で3キロも太ってしまった。

 

そんな困った兄と妹だが、2人がそろってよく食べるものがある。

それは、アンパンマンを冠した食事だ。

 

妹は、令和生まれなのに、なぜか戦後のような味覚の持ち主で、

どんな甘いものよりアンコが大好き。

アンパンを5個連続で食したあと、

「アンコ!」と、もう1個要求したこともあるぐらいの

筋金入りのアンコガール。

 

そして、普段アンコをそんなに食べない兄まで、

なぜかアンパンマンの存在は大好きだったりする。

おそらくドンセンパンチもアンパンマンパンチの影響だ。

 

いろんな食品のパッケージにアンパンマンが印刷されているだけで、

意外なほど食事がスムーズに進むので、

自ずと、我が家の食卓にもアンパンマン商品の登場回数が増えてくる。

 

ただ、「アンパンマンせんべい」や「アンパンマングミ」なら

まだわかるのだが、「アンパンマンカレー」に「アンパンマンハヤシ」、

さらに「アンパンマン中華丼」までいくと、

もはや何が何だか、という感じのコンセプトになってくる。

 

特に不思議なのは、そのパッケージだ。

 

たとえば、カレーと言えばカレーパンマンだとボクは思うのだが、

「アンパンマンカレー」の箱にいちばん大きく印刷されているのはアンパンマンであり、

カレーパンマンはあくまでサブ的な感じでしか出ていない。

これ、カレーパンマンは相当ショックだろうと思う。

モチベーションだだ下がりなのではないか。

 

ただ、カレーですらまだマシなほうで、

「アンパンマンハヤシライス」は、

ハヤシライスマンというキャラがちゃんといるにもかかわらず、

その彼の顔はパッケージ側面にしか印刷されていない。

 

いちばんビックリしたのは「アンパンマン中華丼」で、

箱に印刷されているのは、もう中華丼マンですらなく、

カツ丼マン・天丼マン・釜飯ドンという、似て非なる3人組だ。

ここまでくると、もはや

ダウンタウンの商品に、ダウソタウソが印刷されてるぐらいシュールである。

 

ただ、それ以上に、ボクがとても気になっていることがある。

 

せんべいにも、クッキーにも、グミにも、チョコにも、

それこそカレーにも、ハヤシライスにも、中華丼にも。

当たり前のように、

バイキンマンの画が印刷されているのである。バイキンマンが。

 

仮にも「バイキン」と名乗っているものを

食べ物に印刷していいのだろうか。

公式のHPにも「きれいなものがだいきらい」と書いてある。

そんな衛生観念の低い人物を、食品に描いていいのか?

 

その違和感が決定的になったのは、

ハミガキ粉とハブラシにまで、

バイキンマンが印刷されているのを見たときだ。

 

これは、「このハミガキには効果がありません」というメッセージか?

それとも、「このハミガキでコイツを殺します」という意味なのか?

いずれにしろ、パンク過ぎてクラクラする。

 

しかし、そんなショックを感じているのは、

神経質な父だけのようだ。

 

子どもたちは今日も笑顔で

バイキンマンカレーを、もりもり食べて、

バイキンマン歯みがきで、ごしごし歯を磨いている。

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