リレーコラムについて

うでん

丸原孝紀

私のリレーコラム、本日が最終でございます。けっこう重ためなコラムの連発ですみません。ほとんど反応はなかったのですが、読んだという3人の方からはグッときたという感想をいただいております。狭く深く刺さる感じが自分らしいなあと苦笑いしております。

最後くらいは軽くいきましょうかね。

先日、おでんをこさえました。大きな鍋で、大量に。昼と夜2日ぶんは大丈夫という量でして、最後になった2日目の昼はおつゆがずいぶん余ってしまっていました。おつゆ、もったいないなあ。黄金色のおつゆを見ていて、ふと、うどん入れてグツグツしてみようかと思いつきました。

具材といっしょに、うどんをグツグツ。グツグツからボコボコになったくらいのところで火を止め、おでんの具材といっしょに丼に。ふうふう言いながらいただいたのですが、これが、うまいんですわ。くたくたの大根やずぐずぐの竹輪なんかを合間にパクつきながら、おつゆの味が染み込んだうどんをズルズルと。あ〜、知らんかったあ。お鍋のあとのおうどんは格別だけれど、おでんのあとのおうどんも最高だなんて。もうこれは、「うでん」というメニューで独り立ちさせるべきレベル。

もうかなりいい歳なのですが、まだまだ未知なる体験、新たなる好きに出会えるものですね。

小豆を入れて炊いた玄米というのも、ここんとこ出会ってハマっている食べ物です。玄米に栄養があるのは知っていました。でも、パサパサモサモサした感じがあって、食べ続けられなかったんですね。

ある人から、小豆を入れると、玄米がかなりおいしく食べられると聞きました。ホンマかいなと思いながら、パラパラ小豆を入れて圧力鍋で炊いていただいてみると、なるほど、ほんのり甘くなって、ふっくらした小豆がモサモサパサパサ感を少なくしてくれます。これはうまい。これなら続けられる。ということで、夜のご飯はほぼ、小豆玄米です。お通じに悩まされることもずいぶんなくなりました。

外食でも、新しい好きに出会いましたよ。仕事で訪れた、なんてことない街の駅前にあった、「アジア料理」という名のもとにアジア各国の料理を出してくれるジャンクなお店にランチで入りました。

私は恥ずかしいくらいに食への執着が激しく、注文するのにえらい時間がかかってしまうのですが、その日は違った。「カレー味のスープに入ったラーメンです。麺は茹でた麺と揚げた麺どちらも入っています」という説明がついていた「カオソーイ」なる料理を即決で注文しました。カレーの味でラーメンで、茹でた麺も揚げた麺も食べられる。これは、欲張りな私にピッタリではないか。

出てきたカオソーイは、期待を裏切りませんでした。レモンで味変できるところもうれしい。知らんかったよ、カオソーイ。出会っちゃったよ、カオソーイ。食後に合流した演出家の方に興奮気味で伝えたところ、その方もカオソーイが大好きだとのこと。タイ料理ではポピュラーで、メニューにあれば必ず注文するとのことでした。

恋は遠い日の花火ではない。こんなときめきを、この歳になって味わうなんて。もういろんなことを体験したから、いつ死んでもいいわなんて思ったりもするのですが、新しいおいしさに出会うたびに、欲深い私は思い直すのです。ただ一度の人生、もっともっと味わい尽くしたいと。

食だけではないですよ。人との新しい出会いも、まだまだ味わいたい人生の醍醐味。リレーコラムのバトンを、今年TCC新人賞を獲ったばかりの都竹玲子さんにつなぎます。

「つづくさん」。滑舌の悪い私は呼びかけるときにまだ緊張するくらいの間柄なのですが、スパイシーでフルーティな感性が伝わってくる新人です。私自身が楽しみでならないコラムを、みなさまもお楽しみに。

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