リレーコラムについて

かわいそうなトビー

吉兼啓介

3歳の息子がいる。
機関車トーマスが大好きで、よく一緒に見せられる。
見始めた頃は主人公のトーマスしか知らなかった僕も、
150種類以上のキャラクターを完璧に覚えた。

昔はジオラマだったけど、今はフルCGで完成度も高い。
急すぎると失敗する。とか
良いことをすると良いことが返ってくる。とか
子供が人生の教訓を学べるストーリーになっている。

そんな明るく楽しく素晴らしい子供番組だが
ずっと気になっていることがある。

「エンディングテーマの歌詞」である。

歌の構成は、
まずキャラクターの名前が元気に呼ばれ、
次にそのキャラクターの長所が歌われるというもの。

(トーマス!)♪いつでも元気〜
(ジェームス!)♪おしゃれで愉快~

みたいに、メインの機関車の名前と長所が続く。

(パーシー!)♪頼りになるね~
(ゴードン!)♪とっても強い~
(エミリー!)♪しっかり屋さん~
(ヘンリー!)♪力があるね~
(エドワード!)♪優しい心~

それぞれ素敵なものを持っている。
でも、最後のトビーだけかわいそうなのだ。

(トビー!)♪四角い仲間~

トビーはたしかに四角い。
だが、もっと良いところがあるはずだ。
四角い機関車は他にも50種類ぐらいいるじゃないか。
そう思ってトビーの良いところを考えたが、浮かばなかった。
すまんトビー。

てなことを思ってたら、
広告の商品もけっこう同じかも。と思った。
例えばカメラの仕事が来たとき、
他のカメラによって長所の席は既に埋まっていることが多い。
つまり、これといった特徴がないことが多い。(もちろんある場合もある)
トビーみたいな商品が増えているのだ。

革命的な商品が出たら、
その商品特徴だけを紹介するCMでいい。
かつてのiPhoneとか、ダイソンとかがそうだ。
企画しなくても売れる。

しかし、トビーみたいな商品は
別のところで特徴をつけるしかない。
タレントを起用したり、CMを面白くしたり。

「突き抜けた特徴がある商品」ではなく、
「あのタレントが出てるCM商品」とか
「インド人が踊るCMの商品」とかで覚えてもらう。
後から無理やり特徴をつけるのだ。

ん?ってことは、
特徴が無いぶん、面白いCMが作れるチャンスとも言える。
CMプランナーの僕にはもってこいじゃないか。
そう考えると、トビーみたいな商品が
もっともっと増えて欲しいものである。

かわいそうだったトビーが、
急に愛おしく見えてきた。

NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
5801 2024.11.18 中川英明 育児フォリ・ア・ドゥ
  • 年  月から   年  月まで