リレーコラムについて

ふうたんぬるくてスミマセン

門田陽

 

今、大阪梅田のアパホテルのシングルルーム、

 

ひとりのコピーライターがPCに向かって

コラムの原稿を書いている。

 

今から12時間前、そのコピーライターは東梅田の横丁にある居酒屋で

今どき珍しいコピー好きの若い男女4人とお酒を酌み交わしている。

その居酒屋はそのコピーライターと同じ「陽」という名前(屋号)であった。

若い4人が気を遣ってくれたことがとてもうれしくて2合とっくりでおかわりを

5回頼んだ。この4人との出会いは宣伝会議のコピー講座である。

コロナ禍で授業がリモートになったおかげという言い方は

まだ不謹慎かもしれないが、全国どこからでも受講が可能になった。

そして最近コロナに関する制限がなくなったのを機に会って飲んでいる。

その居酒屋はテーブルに店員さんがオーダーを取りに来る。

店は大繁盛。お客さんが多いにもかかわらずどの店員さんも笑顔で

感じよく対応してくれる。いい店だな、とそのコピーライターは思った。

最近特に東京の繁華街のお店やチェーン店の多くは客側が最初に渡された

QRコードなどからスマホでメニューを調べて注文をするのが

当たり前のようになっている。店員さんはただ料理やドリンクを運ぶだけで

お客さんとはわざとかのようにコミュニケーションを取らない。

確かにコロナ全盛(このいい方も難しいが)の頃は接触はもちろん

会話も控えなければいけなかったので、つれない態度が主流になってしまったのか。

そのコピーライターはときどきその手のお店で泣きそうになる。

 

今から18時間前、そのコピーライターは伊丹空港のカフェでビールの大ジョッキを

飲んでいる。ほんのささいな不注意で時間を1時間潰さねばならなくなりカフェに

入ったものの苦手なコーヒーを頼む気にはなれず、気を紛らわそうとビールを

頼んだのだ。なぜ中ジョッキではなく大ジョッキにしたのかは当人もわからない。

 

今から19時間前、そのコピーライターは伊丹空港で飛行機から降りて

ベルトコンベアの横を通り過ぎ出口のところで機内に忘れ物をしたことに

気が付いた。座席の前のポケットにいつも持ち歩いている大学ノートと

4色ボールペンを入れたままだ。

しまった!さきほど降りる際の飛行機のアナウンスの声が蘇る。

「保安上の理由によりお客様が一度機外に出るとお戻りになれませんので、

お忘れ物にはくれぐれもご注意ください!」

あ~~、しまったなぁ。地上係員の方に事情を話すと案の定ほかの係員に回され

さらに拾得物の窓口に回される。たったいま到着したばかりの飛行機の17Cの

座席ポケットだと強く主張しても窓口の人は至極冷静にiPadで打ち込みを行い

「これですか?」とそこには表紙にちびまる子のシールが貼られた僕のノートと

ジェットストリームの4色ボールペンの写真があった。

「はい!これです、これ!!」とうれしい声を出して喜ぶと

「検査等を行いますので1時間ほどお待ちください」と言われる。

大学ノートとボールペンに一体なんの検査をするのだろう。

 

今から20時間前、そのコピーライターは飛行機の中。

ドリンクサービスでコンソメスープをお願いする。

テーブルの上にはお気に入りのシールを貼った大学ノートと4色ボールペンがある。

スープをこぼすといけないのでノートとボールペンを座席前のポケットに入れる。

コンソメスープを飲むと少し眠くなった。うとうとする。あ~気持ちいいな。

 

今、大阪梅田のアパホテルのシングルルーム、

ひとりのコピーライターがリレーコラムの二日目を書き終えた。

 

※博多弁タイトルのワンポイント講座②

ふうたんぬるい・・・標準語でよく言えばせかせかしていない、いやちがうな。

わかりやすく言えば鈍くさいこと、のろまなことです。「だれがあいつに任せたとね、

ふうたんぬるかけん終わらんばい!」みたいに使います。

 

 

 

 

 

 

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