アングルにこだわれ!
我が家には、
理不尽な家族がいる。
甘えてくるわりに、
すぐに反抗してくる、
わがままな生き物。
そう、猫だ。
そして、そんな性格も含めて、
猫はたまらなくかわいい。
在宅リモートが多いので、
一緒の時間も多いのだが、それゆえに困ったことが起きた。
コロナ前は家をあけていても問題なかったのに、
在宅が長すぎて、ちょっといないだけで寂しがるようになってしまったのだ。
そこで、ペットカメラを導入することにした。
外からも見守れて安心。
呼びかけることもできる。
しかも、カメラも300度程度なら向きを変えられ、
家の外から操作することもできる。
幸せだ。
僕は文明に感謝した。
これがDXか。
しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。
ある日のことだった、
妻から、写真が送られてきた。
そう、ペットカメラは、猫の姿を、
録画やスクリーンショットもできるのだ。
いつも通り、
猫のかわいい寝顔かなと思って開くと、
そこには、深夜に隠れて、アイスを食べる大男の姿があった。
しまった!!!!
猫を確認するためのカメラのつもりが、、、
盲点だった。
アングルを意識する。
そんな、基本的なことを怠ったがゆえに起きた悲劇だった。
「夜中に間食するな!」
と言われていたのにも関わらず
食欲に負けてしまった31歳会社員男性の姿がそこにはあった。
醜い、醜すぎるぞ。
しかし僕だって、馬鹿じゃない。
300度回転できるカメラ。
つまり、60度は死角があるということだ。
ふふふ、まだ機械に人間を越すことはできない。
僕は、家の中での死角を探した。
「アングルにこだわれ!」
CMプランナーの先輩の教えを、思い出した。
食べている瞬間だけじゃない。
家にお菓子を持ち込む瞬間までカメラに映ってはいけないのだ。
頭の中では、ミッションインポッシブルのテーマが流れていた。
そしてついに見つけたのだ。
二台のペットカメラから逃れた、
家の中でのオアシスを。
勝った!!
これでバレずに、いつでも好きなものを食べられる!
僕は意気揚々とポテトチップスを食べた。
しかし、大事なことを忘れていた。
そう、人間には視覚だけじゃない。
優れた五感があることを。
ポテチの匂いで、
妻には一瞬でバレてしまった。
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