クールビューティーへの憧れ
私の子供時代の写真には、ちょっと変わった共通点がある。
ほぼどれも笑っていない。ビースサインとか変顔もしていない。
口元で手の甲を横に向けて、顔も横向き、目線だけがカメラ向き。
これは一体何なのだろうと物心がついてから、幼少期のアルバムの自分を見て、いつも不思議だった。
楽しくなかったわけではないはずだ。むしろシャッターチャンスに貪欲だったはずだ。周りの友人や近所の子供たちはピースサインやゴリラの顔をしていて陽気だ。
この答え合わせは、NHK「思い出のメロディー」を見たある夜にできた。
「これだ、これをやっていたのか」と一人で膝を打って納得した。
私は、当時3歳の頃の大ヒット曲・金井克子「他人の関係」の前奏、「ぱっぱっぱやっぱ」の真似をひたすらやっていたのだ。
馬鹿の一つ覚えといえばそれまでだが、随分ませてたと思う。ピースをする馬鹿より、よっぽど品のある馬鹿だ。それを止めなかった両親にも感謝している。決して同調を強いなかった。
とにかく、猛烈に好きだったのだ。
あの半開きでアンニュイな目つきが、お世辞にも上手いとは言えないノンビブラートの声が、体の重心を少し斜めにしたポーズが、そして一世を風靡したと言われるあのフィンガーアクションが。
ひたすらそのモノマネをしていたのだ。
ドラゴンボールのカメハメ波や、ビートたけしのコマネチではなく、金井克子に夢中だった。
それ以降もアンニュイなクールビューティーへの憧れは続き、江波杏子、夏木マリ(どちらもGメン75)、松雪泰子(容疑者Xの献身)、大塚寧々(Dr.コトー診療所やHERO)、椎名林檎などはいまだに好きだ。
クールビューティーの元祖・若尾文子の特集で、電通の澤本さんが冒頭に若尾文子の魅力を語っているのを見た時には、歯軋りするほど羨ましかった。
さて、数あるクールビューティーの中でもNHKの珠玉の名作「阿修羅のごとく」の吹雪ジュンが出色だ。牛乳瓶メガネのいしだあゆみもいい。
オリジナルは、是非みなさんにも見ていただきたい。名作だ。
和田勉演出、音楽は斬新なトルコの軍楽(明治十勝スライスチーズのCMで所ジョージが歌っていた)。
その後、森田芳光監督で映画としてリメイクされ、今度Netflixで是枝裕和監督でさらにリメイクされるらしい。
吹雪ジュンの役が広瀬すず、いしだあゆみ役が蒼井優、少し不安だ。いや、広瀬すず、大いに不安だ。頑張れ、すずちゃん。
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